2017 Fiscal Year Annual Research Report
筋収縮は脳の健康に貢献するか?筋から脳への情報伝達機構の解明と運動処方への応用
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16H05919
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Research Institution | Physical Fitness Research Institute, Meiji Yasuda Life Foundation of Health and Welfare |
Principal Investigator |
須藤 みず紀 公益財団法人明治安田厚生事業団体力医学研究所, その他部局等, 研究員(移行) (10585186)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 豊かな環境 / 身体活動量 / 認知機能 / 筋肥大 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの先行研究において,豊かな環境飼育が脳内の神経新生を促すことや認知機能を向上させることが知られている.しかしながら,豊かな環境飼育が身体活動量に及ぼす影響は明らかではない.前年度の本研究の結果から,豊かな環境飼育が不安様感情の低下のみならず,骨格筋の重量を増加させることが示された.そこで,平成29年度は,豊かな環境飼育における①飼育ケージ内の各個体の身体活動量の評価,②空間認知機能能力の評価,③骨格筋に対する組織学的な評価について検証し,それらの関係を明らかにすることを目的とした. Wistar rat(雄性)を対象し,豊かな環境飼育群(EE群,N=8~10)と通常飼育群(SE群,N=8~10)に分類し6週間の飼育を行った.対象動物は各飼育ケージ2匹ずつとした. 身体活動量は3軸加速度計のnano-tag(キッセイコムテック社)センサーを背部に埋め込む処置をし,モニタリングした.記録された身体活動量(振動数)は,明期と暗期における1日あたりの総和の平均を算出し評価した.飼育期間終了後,空間認知記憶能力はモリス水迷路を用いて逃避潜時間を測定し評価した.また,ヒラメ筋を対象に筋重量,組織染色による筋細胞横断面積の解析をおこなった. 暗期における身体活動量は,EE群がSE群と比較して有意に高い値を示した.明期では両群間に差異はなかった.6週間の飼育後におけるヒラメ筋の筋重量,筋細胞横断面積の双方がEE群にて有意に増加した.また,モリス水迷路における逃避潜時間は,EE群ではSE群よりも有意に低かった.したがって,豊かな環境飼育は,①自発的な身体活動量を誘発することが本研究にて明らかになった.また,②空間認知記憶能力の向上のみならず③筋肥大を惹起することも示唆された.次年度は,骨格筋の機能と認知機能,及び情動に共通する因子の解析を進める予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は,研究計画に対しておおむね順調に進展した.新たな評価法(身体活動量)の導入にあたり,生化学実験系の進捗に若干の遅れを生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,本研究におけるメカニズム解明を中心に進める予定である.採取済みの各組織のサンプルを対象に,タンパク質の定量を実施する.また,生体内における認知機能と情動に関与する因子の可視化に試みる.さらに,自発的な身体活動をもたらす異なる環境モデルを作成し,身体活動の種類と認知機能,情動の関係を明らかにする実験系を立ち上げる予定である.
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