2016 Fiscal Year Annual Research Report
Novel method for structural analyses of nucleic acids by using orientation dependent FRET system
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16H05925
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
樫田 啓 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (30452189)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 核酸 / エネルギー移動 / 構造解析 / DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では我々が開発した配向依存型FRET系を利用した核酸構造解析法の確立及びそれを利用した種々の核酸構造解析を目指している。 本年度は主として1)ニック及びギャップ含有DNAの構造解析、及び2)使用する蛍光色素の拡張について検討を行った。 1)DNAの切れ目であるニックやギャップ含有DNAはDNA修復系における重要な中間体である。しかしながら、これまでその構造及び運動性を系統的に検討した例はほとんどなかった。本研究ではピレンおよびペリレンをニック・ギャップ含有DNAに導入することでその構造および運動性を系統的に検討した。その結果、ニック含有DNAでは通常のB型DNA二重鎖とほぼ同一の構造をとることが分かった。一方で、FRETの配向依存性が弱まったことから、ニックを含まないDNA二重鎖と比べてより柔軟であることが分かった。 一方、1塩基ギャップ含有DNAではFRETの配向依存性が大きく変化することが分かった。このことはニック含有DNAと構造が大きく異なることを示している。更にギャップのサイズを増大させたところ配向依存性が弱まることが分かった。特に3塩基ギャップ含有DNAではFRETの距離依存性のみが観察されたことから、3塩基ギャップを導入した際には2つの二重鎖がスタッキングしていないことが分かった。以上のように、ニック及びギャップ含有DNAの構造・運動性を詳細に明らかにすることに成功した。 2)これまではピレン・ペリレンペアを利用していたが、他の蛍光色素ペアを利用することを試みた。その結果、ペリレン・Cy3ペアを利用した構造解析が可能であることを明らかにした。その際、ピレン・ペリレンペアと比較してフェルスター半径が大幅に増大したことから、ペリレン・Cy3ペアが従来より大きな構造体の解析に利用可能であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では4か年の研究期間において、1)FRETの配向依存性を利用した構造解析法の確立、及び2)それを利用した種々の核酸構造解析を行うことを目指している。本年度は1)および2)について検討を行い、1)について新たなペリレン・Cy3ペアを構造解析に利用可能であることを明らかにした。このペアを利用すれば、従来のピレン・ペリレンペアより大きな構造体の解析が可能である。更に励起・検出波長を長波長化できることから、紫外光を吸収する分子を含む構造の解析も可能となるという利点がある。 また、2)についてはニック・ギャップ含有DNAというDNA修復系の中間体についてその構造・運動性を解明することに成功した。これまでにもいくつかの構造解析や運動性解析が報告されているものの、系統だった検討は行われていなかった。それに対し、FRETの配向依存性を利用することでこれらの構造を簡便に解析することに成功した。これはDNA修復系におけるDNAポリメラーゼやリガーゼの認識機構を明らかにするうえでも重要な知見である。 以上の成果から当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究初年度において本研究の基盤となるFRETの配向依存性を利用した核酸構造解析法の開発に成功した。そこで、平成29年度は以下の二点について重点的に検討を進める。 1)ポリアデニン―チミン配列(A-tract)の解析 A-tract配列は二重鎖を屈曲させることが知られているものの、その詳細な構造は明らかとなっていない。そこで、我々が開発した構造解析法を利用することでA-tract配列の構造を明らかにすることを目指す。 2)核酸-小分子相互作用の解析 核酸と小分子の相互作用は薬剤開発やその作用機序を解明するうえで極めて重要である。我々が開発したFRET系は距離に加え、配向変化によってFRET効率が変化するために、小分子と核酸の相互作用を解析するうえで優れたツールとなることが期待される。そこで、本FRET系を利用してDNAとマイナーグルーブバインダーなどの小分子との相互作用を解析することを目指す。
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Research Products
(13 results)