2018 Fiscal Year Annual Research Report
ロシア史のなかのイスラエル―帝国崩壊と戦時暴力のシオニズムへの影響
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16H05930
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鶴見 太郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (00735623)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | シオニズム / ユダヤ人 / ロシア / ナショナリズム / 自己複雑性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、3月に、"International Relations Within: Self-Complexity in Ethnic Conflict and Coexistence"と題して、本研究の理論的な視座を深化させるための国際ワークショップ開催とそのための準備が柱となった。 当初の計画では、ポグロム等のシオニストやその他ユダヤ人への影響を捉えることを企図していたが、近年のドイツ史等における「野蛮化」の議論が指摘するように、暴力にさらされた経験がすなわち世界観の暴力化につながるとは限らないことを考えると、人々の多様な自己のなかでの変化という次元に照準を合わせる必要があるとの考えに至った。 そこから、心理学における自己複雑性概念を援用し、エスニックな諸側面の自己のなかでの関係性という問題を想定し、そのレベルにおいて議論を進める必要性があると判断し、心理学・社会心理学における諸成果の渉猟に努めたうえで、社会心理学者を中心の一つに据えたワークショップを開催することにした。普遍的な問題として考えるために、東南アジアやコーカサス、イスラエルにおける諸問題にも照らして議論を行った。特に、東南アジアの華人はヨーロッパのユダヤ人と共通する側面を強く持つため、9月にインドネシアに渡航し、ジャカルタとポンティアナックの華人社会の見学を行った。 自己のなかの諸側面の関係のあり方という点では、各々の側面、例えばロシア的側面とユダヤ的側面が、相互依存的になるようにあり方が発見されたほか、異なる側面と結びつくことで自己が当初想定しなかった方向に向かうことや、地域性との結びつき方などに関して、様々な知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ワークショップについてはつつがなく終了することができ、研究者ネットワークの構築と、自身の研究に対する理論的な視座の深化をある程度達成することができたが、以前から懸案となっている単著については、あまり進めることができなかった点で、期待以上の成果とまではいえない。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の成果から、自己の諸側面やその背景となる諸カテゴリ同士のつながりのあり方という点からロシア史とイスラエル史を繋ぐ可能性を探ることが今後の課題となる。そのために、19年度は、東欧(ロシア含む)ユダヤ史、シオニズム史、パレスチナ史の専門家計10名程度が登壇する国際会議を冬に東京で開催する。それにより、これまで交流がほとんど行われてこなかった東欧史とパレスチナ史の連携のあり方も探って行きつつ、広く、東欧史がイスラエルを含めたパレスチナ史にどのようなインパクトを持ってきたのかを考察し、本研究のまとめとする。
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Research Products
(7 results)