2017 Fiscal Year Annual Research Report
文法指導実践のデータベース化による教育文法の指導効果の実証的研究法の確立
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16H05941
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
亘理 陽一 静岡大学, 教育学部, 准教授 (90509241)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 明示的文法指導 / 教育文法 / 教育実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究A(文法指導実践の解釈・共有・集約を可能にするデータベースの作成)に係る作業を進め、国内を中心に文法指導の実践報告・研究論文を幅広く渉猟し、対象や条件、指導内容・方法、結果等の観点から整理作業を行った。研究C(中学・高校・大学での授業実践を通じた実践的妥当性の検証)に着手し、予備的調査として中高大学生の文法理解度を測るテストを実施した。分析により、高校1、2年生では特に、動詞句で表現される文法概念の内、仮定法過去や未来時表現、完了相の用法の理解が十分とは言えない一方で、学校・学年によりばらつきはあるものの、文型や従属節、進行相や単純過去の理解は比較的良いことが明らかになった。これは、文法概念を学習してすぐに十分な理解が得られるわけではないこと、さらに形態統語的に単純な構造より意味論的・語用論的側面のほうが理解が難しいことを示していると考えられ、大学生においても同様の傾向が確認された。こうした成果をもとに、授業実践協力者と5回の研究会を開催し、実践の不足や指導上の課題が明らかとなった文法構造,および日本語を母語とする学習者にとって重要な文法構造・概念を指導するための内容・方法を教材化を進めた。その骨子は,教授・学習の結果として英文法の体系と英語そのものがよく見えるようになるために必要な(文法機能の3側面を切り離さない)文法指導とはどのようなものかを理論的・実践的に示すことであるが、接続のための予備的検討として文科省作成教材We Can!の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究Aについては、国内を中心に文法指導の実践報告・研究論文を幅広く渉猟し、対象や条件,指導内容・方法、結果等の観点から詳細に整理し、教師・研究者が必要に応じて参照・ 比較できるよう、第二言語習得研究におけるIRIS(http://www.iris-database.org)のように、Web 上で常時アクセス・検索可能な形で公開する形でのデータベースを作成することを目標としている。4年間の計画全体として遅れはないが、当初の計画では早い段階でデータベースの公開を行う予定であったことに鑑みると、別の管理・運営業務のエフォートが想定外に増大したことにより、文献渉猟、および体系的整理作業の進捗状況は思うようには進められず、年度内のデータベース構築が叶わなかった。現在までに、理論的観点において必要な文法指導関係書籍・資料はおおよそ集められているが、一次研究論文の収集は平成28年度に渉猟した分にとどまり、実践報告の収集が十分とは言えない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究A(文法指導実践の解釈・共有・集約を可能にするデータベースの作成)の仕上げを優先的に進め、データベース構築作業を行う。 研究C(中学・高校・大学での授業実践を通じた概念・定義の妥当性の検証)に本格的に着手し、中学・高校・大学での授業実践協力者の助言をさらに得ながら、引き続きミーティング・研究会を開催し、これまでの授業実践や文法解説書等の知見と課題を明らかにし,計画通りに教材および教師用手引きをまとめる。教材化が完了した文法構造・概念ごとに,実践協力者の協力を得て授業実践を行い,得られたデータ(授業の記録および事前・事後のテスト・スコア)を量的・質的に分析する。授業実践とその分析について十分なサンプルを得るまで平成31年度に継続して実施する。 研究B(系統的レビューによる成果・課題の析出)の作業を見直し、データの分析によって概念的・操作的定義の妥当性を検証する。結果を踏まえた研究成果を、明示的文法指導の研究モデルとしてまとめる。
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Research Products
(4 results)