2016 Fiscal Year Annual Research Report
明示的・暗示的語彙知識の習得における集中学習と分散学習の効果
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16H05943
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
中田 達也 関西大学, 外国語学部, 准教授 (00758188)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 外国語教育 / 英語教育 / 第二言語習得 / 語彙習得 / 分散効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、明示的・暗示的な語彙知識の習得において、集中学習・分散学習が果たす役割を調査することである。語彙学習における分散効果を調査したこれまでの研究は、いずれも明示的語彙知識のみを測定したものであり、集中学習・分散学習が暗示的語彙知識の習得にどのような役割を果たすかは明らかになっていない。以上のような理由から、本研究では集中学習・分散学習が明示的・暗示的語彙知識の習得に果たす役割を調査することで、効果的な語彙学習法を提案することを目的としている。
平成28年度は、以下の4点を行った。第1に、分散効果および明示的・暗示的知識の習得に関する包括的な文献調査を行った。第2に、先行研究を元に実験計画を立て、実験で使用する学習素材およびコンピュータ・プログラムの開発を行った。英文テキストはCorpus of Contemporary American English (COCA) 等のコーパスを元に作成された。あわせて、暗示的語彙知識を測定するためのプライミング課題および明示的語彙知識を測定するための筆記テスト(翻訳課題、語形再認課題)の作成も行った。第3に、日本人英語学習者を対象としたパイロット・スタディーを行った。第4に、研究課題に関連した論文4本を執筆した。内1本は査読付き国際誌Studies in Second Language Acquisition (Cambridge University Press)への掲載が決定した。なお、同誌のImpact Factorは2.1であり、この数字はJournal Citation Reportsに登録されている言語学分野の国際ジャーナル169誌中4位である。また、研究成果を解説したブログや、JALT岡山での公開講演等を通して、研究成果を広く社会・国民に発信していくことにも努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度には、以下の3点を行うことを目標としていた:(1) 分散効果および明示的・暗示的知識の習得に関する包括的な文献調査、(2) 実験で使用する学習素材およびコンピュータ・プログラムの開発、(3) パイロット・スタディー。当初の予定通り(1) ~(3)を遂行することが出来たため、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に日本人大学生を対象として行ったパイロット・スタディーでは、学習対象語が含まれた英文を読み、学習対象語の意味を文脈から推測する課題を行った。しかしながら、参加者が正しく意味を推測できた割合は6.1%にとどまり、正答率がきわめて低かった。意味推測の正答率が低いと、本研究で目的としている明示的・暗示的語彙知識の習得が正しく測定できない可能性がある。そこで、平成29年度に行う本実験では、以下の2点の修正を行うことで、意味推測がより容易になるように工夫する。
第1に、パイロット・スタディーで使用した英文を修正する。パイロット・スタディーでは、Corpus of Contemporary American English (COCA)から抽出した英文を使用したが、本実験ではGraded Readers Corpus (http://www.lextutor.ca/conc/eng/)など、より平易なコーパスを元に英文を作成する。
第2に、パイロット・スタディーの集中学習条件では、学習対象語が含まれた3つの英文を1文ずつ個別に提示した。本実験では、学習対象語が含まれた3つの英文を全て同時に提示する。複数の英文を同時に提示することで、学習対象語の意味に関するより多くの手がかりが一度に得られるため、語の意味推測がより容易になると考えられる。
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