2018 Fiscal Year Annual Research Report
Experimental archaeological study for reconstructing the history of East Asian casting technology by contrastive experiment
Project/Area Number |
16H05946
|
Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
丹羽 崇史 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (40455564)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 鋳造技術 / 対照実験 / 実験考古学 / 東アジア / 青銅器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は異なった条件で実験鋳造した試料どうしを比較検討する「対照実験」の手法を主軸として、殷周青銅器を中心とした古代東アジアの鋳造技術の解明に取り組むものである。2018年度は3年目にあたる。 2018年度は、泉屋博古館・永青文庫等の国内機関、ならびに山西省考古研究所等の中華人民共和国の機関にて、青銅器・鋳型などの資料調査を実施した。研究協力者とは随時協議を進め、2018年12月には芦屋釜の里にて楼空青銅器紋様の製作技法の比較を主眼とした対照鋳造実験を実施した。また、前年度に引き続き、中国出土冶金関連遺物・青銅器など関連資料の集成を進めた。 2019年2月23日~28日には、研究協力者である蘇栄誉氏(中国科学院自然科学史研究所)、張昌平氏(武漢大学)、廉海萍氏(上海博物館)を招聘し、24日には国際研究会「陶笵技術の実験考古学」を開催した。研究会では蘇氏、張氏、廉氏による、中国における陶笵(土製鋳型)の研究についての報告とともに、廣川守氏(泉屋博古館)、丹羽がそれぞれの実験内容について報告した。また、本科研による実験を中心に、これまで製作した実験試料(鋳造試料、土製鋳型試料等)を一堂に展示し、参加者が観察・議論をするワークショップも併せて開催した。研究会終了後、蘇氏、張氏、廉氏とともに、奈良国立博物館・泉屋博古館の所蔵青銅器の調査を行うとともに、京都文化博物館・芦屋釜の里・九州国立博物館を見学した。 研究成果の一部は、『FUSUS』第10号、『曾国考古発現与研究』、『東洋文化』第99号に論文として公表したほか、8th Worldwide Conference, Society for East Asian Archaeology (SEAA8) 、日本文化財科学会第35回大会、アジア鋳造技術史学会2018東京大会、日本中国考古学会2018年度大会にて成果を報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度同様、交付申請書の「研究計画・方法」に記した「①青銅器・鋳造関連遺物の資料集成とデータベース化」、「②考古資料の調査・仮説構築」、「③対照鋳造実験の実施」、「④実験製作試料の調査・自然科学分析」について項目別に述べる。 ①は前年度から継続して中国における冶金関連資料・青銅器の資料集成を継続して進めることができた。②も国内外の各機関にて、青銅器のほか、鋳型などの冶金関連遺物の資料調査・熟覧を実施した。③は今年度も芦屋釜の里にて鋳造実験を実施し、顕著な成果を挙げることができた。④は過去の実験試料を対象に、九州国立博物館にて実施したX線CT装置による内部構造調査結果を検討し、新たな知見を得ることができた。 また、中華人民共和国から蘇栄誉氏(中国科学院自然科学史研究所)、張昌平氏(武漢大学)、廉海萍氏(上海博物館)を招聘し、2月24日に国際研究会「陶笵技術の実験考古学」を開催した。研究会では、現在調査を進めている陶笵技術について意見交換を行うとともに、実験で製作した試料(鋳造試料、土製鋳型試料等)の観察・議論をするワークショップも併せて開催し、多くの知見を得ることができた。このほか、研究誌・論文集にて成果の一部を公表したほか、複数の国際学会・国内学会にて成果の報告をおこなった。 以上のような2018年度の実績から、本研究計画はおおむね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度に当たるため、①考古資料の調査・研究、②実験製作試料の自然科学分析、③現代の鋳造技術の調査を進めるとともに、④成果の公表により重点を置いて進めることとする。 ①考古資料の調査・研究 前年度に引き続き、冶金関連遺物・遺構と青銅器の集成・データベース化を進める。資料集成・データベース化においては、大学院生クラスのアルバイトを雇用して、作業を効率的に行う。また、鋳型を中心とした冶金関連遺物のほか、消失原型法を使用した可能性が想定される青銅器を中心に、国内外の機関が所蔵する資料の調査・研究を研究協力者と共同で進める。 ②実験製作試料の自然科学分析 これまでの対照実験で製作した鋳型や製品を対象に、研究協力者とともに材質・構造調査を進める。 ③現代の鋳造技術の調査 日本・中国・韓国において、伝統的な鋳造技術で製作を行っている工房を訪問し、具体的工程・使用 材料などについて調査・記録を行う。また、記録化された映像や民俗誌、文献史料などの記録の集成も進める。 ④成果の公表 これまでの調査・研究の成果を国内外の研究誌・論文集、ならびに学会発表にて公表する。中国語圏出身の大学院生クラスのアルバイトを雇用して、中国語論文・発表を効率的に進める。また、これまでの実験の成果をまとめた研究成果報告書を刊行する。報告書には実験の成果とともに、前年度に開催した研究会「陶笵技術の実験考古学」の内容についても紹介する予定である。
|
Research Products
(15 results)