2016 Fiscal Year Annual Research Report
企業の海外市場からの撤退経験が与える参入戦略への影響:統計的分析による国際比較
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16H05953
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山野井 順一 早稲田大学, 商学学術院, 助手 (20386543)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 失敗からの学習 / 海外市場からの撤退 / 海外市場への再参入 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、企業の海外市場からの撤退の経験が再参入に与える影響を分析するにあたり、その因果関係についてインタビューや雑誌記事からの質的な情報の収集に努め、その上でのデータベース構築に勤めた。その結果、再参入を行っている事例について、撤退時から大きく市場が成長している場合、前回の失敗を肯定的にとらえ、参入が再び行われる事例が散見された。また、再参入の際には、異なる参入形態、例えば、完全子会社での参入が失敗した場合には、再参入時はジョイントベンチャーで臨むなど、を選択するケースがみられた。また、経営陣における交代は、経営戦略上の変更を伴うことがあるためか、前回撤退した市場に再参入している事例が散見された。 これらの事例を踏まえつつ、分析の初期段階として、1990年から2016年までの日本の上場企業のみを対象とし、予備的な定量的な分析を行った。その結果として、国、産業で大きく日本企業の撤退率が異なっており、特に進出先の国、産業での日本企業の撤退率が高く、かつ同社の撤退時の現地法人数や規模が小さいほど、再参入が促されることが確認された。 次年度については、これらの調査結果を踏まえたうえで、OECD加盟国の上場企業にデータを拡張し、撤退とその後の再参入の影響について関係性をテストする。これらのデータ構築に当たり、個々の海外市場からの撤退について定性的なデータを取得したうえで、撤退の性質が事業運営がうまくいかず、失敗とみなされるものなのか、戦略変更や他社への売却のような成功とみなされるようなものなのか、その点についてのデータの取得が必要となろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度においてはデータ構築にあたり、海外市場からの撤退と再参入についてインタビュー調査を交えながら事例とその因果関係の理解に努めた。そこから、撤退の際に自社に起因する要因が環境に起因する要因かにより、撤退後の対応が異なることが示唆された。同じく、撤退において、投資規模や撤退の容易さが、撤退後の対応の差異に影響を与えていることが定性的に示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後については、日本企業のみならずOECD加盟国の上場企業のデータを整理し、撤退とその後の参入の決定要因について、統計的分析を試みる。特に、各国の産業ごとの廃業率のデータを作成することで、環境要因として当該国産業の競争の激しさの代理変数とする。また、役員の変更の割合など、失敗からの学習に影響を与えるような内部要因にも着目する。
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Research Products
(2 results)