2018 Fiscal Year Annual Research Report
Research on Social Stratification of Immigrants in Japan
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16H05954
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
永吉 希久子 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50609782)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 移民 / 階層 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度実施した調査データのクリーニングおよび職業コーディングを行い、基礎的な分析結果をまとめた報告書を作成し、ウェブ上で公開した。調査に回答してくださった対象者の国籍、在留資格の分布を在留外国人統計と比較したところ、大きな偏りはなく、回収率は低いものの一定の代表性のあるデータが得られたと考える。 基礎的な分析の結果として、以下のことが明らかになった。今回の対象者のうち、健康保険にはほとんどの対象者が加入している一方、年金については20%の人が未加入であることが示された。また、有業者の割合は69.9%と高く、学生が15.5%を占めていた。また、雇用されている人の中で、雇用契約期間の有無を見たところ、韓国・朝鮮籍者の84%が雇用契約期間の定めがないのに対し、ブラジル・ペルー国籍者やフィリピン国籍者では有期雇用の割合が高く、特にブラジル・ペルー国籍者では「6か月未満」という短期の雇用の割合が37%に上っていた。職業についてもブラジル・ペルー国籍者ではマニュアル職の割合が高く、国籍による階層的地位の差が示された。 外国人だという理由で嫌な思いをした経験がある人とない人はそれぞれほぼ半数ずつであった。嫌な経験をしたことのある人の46%が仕事中に、34%が仕事を探すときにそうした経験をしていた。また、韓国・朝鮮籍者の半数以上が「日本社会の一員として認められている」と回答しているのに対し、ブラジル・ペルー国籍者では、半数近くが認められていないと感じていることも明らかになった。雇用における地位の不安定性が影響している可能性が示唆される。 さらに、所得、職業、雇用形態の規定要因に関する分析から、ブラジル・ペルー国籍者では所得や職業的地位が低くなる傾向にあり、これらの国籍による階層的地位の格差が、必ずしも教育や日本語能力といった人的資本の差に還元されないことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
職業のコーディングにやや時間を要したため、本来今年度中に終える予定であった配偶者の職業と本人の母国での最終職のコーディングが終えられなかった。しかし、次年度の早い時期に終えることができると考えられるため、大きな問題とはならない。また、調査データのクリーニングを終え、基礎的な分析および階層的地位の規定要因の分析と結果の発表、またそれをもとにした論文の執筆を行っている点で、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる次年度では、移民の日本における階層的地位についての分析をさらに発展させるとともに、主観的な社会統合の規定要因についても分析を行い、その成果を国内外の学会で報告するほか、論文として発表する。また、年度末には書籍として刊行する準備を進める予定である。
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