2016 Fiscal Year Annual Research Report
オルタナティブな学校文化創造のための比較社会学的研究:日常的実践の可能性
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16H05955
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
森田 次朗 中京大学, 現代社会学部, 講師 (30732862)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 不登校/不就学 / シティズンシップ / 学校文化 / 日常的実践 / 義務教育制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、不登校及び不就学児童生徒の学習権保障という観点から、現代日本の義務教育制度の周辺部で登場しつつある「オルタナティブ教育」と呼ばれる多様な学びの現場において、児童生徒をはじめ、教員、保護者たちが、あるべき人間像をめぐり遂行している日常的な諸実践の過程を捉えることを通して、公共的な学校文化の生成過程を社会学的に解明することである。本研究の最終目標は、こうした学校文化の生成過程を分析することで、これまで義務教育制度を基盤として成立してきた「近代市民社会」の新たな位相、とくにその成員資格(シティズンシップ)の可能性を明らかにすることである。 以上の目的を遂行するべく、平成28年度に実施した研究の成果は以下の通りである。1)公教育制度の「外部」で不登校児童生徒を受け入れてきた事例として、民間施設であるフリースクール(京都市、名古屋市等)においてフィールド調査を実施するとともに、比較研究の観点から同じく公教育の枠外の事例として、日本語教室(愛知県豊田市)においてフィールド調査を実施した。2)公教育制度の「内部」で不登校児童生徒を受け入れてきた事例として、全国の夜間中学校の活動実態に関する資料を収集し分析した。具体的には、理念上は「多文化共生」が目指されている夜間中学校の現場において、学習者=支援者間及び学習者間でいかなる葛藤が生じているかに注目した。3)近年日本では、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(通称:「教育機会確保法」)の成立に代表されるように、フリースクールをはじめとする民間施設の法制化が急速に進展していることから、こうした法制化の動向に関する行政文書とそれに関するメディア報道を体系的に収集し分析した。上記の研究成果は、学会報告及び投稿論文という形態でまとめることができた(13.研究発表欄参照)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、計画通り、義務教育制度の枠外に位置する教育施設(フリースクール、日本語教室等)でフィールド調査を実施することができたことに加え、シティズンシップ研究の蓄積を参照することで、オルタナティブ教育を分析する際の理論的枠組み(学習機会をめぐる権利/義務の重層性、就学する権利/しない権利)について着想を得ることができたため。また、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(通称:「教育機会確保法」)の成立に代表されるように、民間教育施設の法制化の意義と課題、なかでも法制化により教育現場がどのような影響を受けうるかについて分析することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、オルタナティブ教育に関する日本国内の事例、とくに義務教育の枠外の事例を中心に分析したため、平成29年度は、前年度からの調査を引き継ぎつつも、同じ国内でも義務教育の枠内の事例と同時に、海外のオルタナティブ教育の事例(東アジア、北欧諸国等)についても調査対象を拡大し、資料・情報の収集を積極的に進めていく。
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