2016 Fiscal Year Annual Research Report
Control of Ions by planer lipid layer on the interface of 2D nanomaterials and self-assembled peptides
Project/Area Number |
16H05973
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
早水 裕平 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (80443216)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自己組織化 / ペプチド / 平面脂質膜 / 2次元材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己集合ペプチドの安定性制御:足場となるペプチド構造体の安定性は固定される脂質二重膜の流動性を制御することに繋がる。個々のペプチドは、原子薄膜に非共有結合性の相互作用によって吸着しているので、液中においては一定の割合で絶えず吸着脱離を繰り返し平衡状態を保つ。これまで使用していたペプチドは、平衡状態から離れ、バッファー水溶液等で洗浄した場合に、著しい脱離を生じることが知られていた。今回の研究によって、ペプチド間の相互作用を強くするようなアミノ酸配列を採用することによって、水溶液で洗浄しても被覆率の低減がほとんど見られないペプチド自己組織化膜の形成に成功した。 具体的には、異なる電荷を有するアミノ酸をペプチドのアミノ酸配列にそれぞれ挿入することによって、ペプチド間のクーロン相互作用を増強するアミノ酸配列を設計した。このペプチドは、グラファイトおよび二硫化モリブデンの原子平坦面に自己組織化構造を自発的に形成する。これらのペプチドを1から3時間程度の間、自己組織化させ、その後、水溶液で複数回洗浄した後にその表面を原子間力顕微鏡で観測したところ、ペプチドの種類の寄っては、自己組織化構造のモルフォロジーが洗浄後に変化したものもあったが、洗浄前後での被覆率の変化はほとんど観測されなかった。また、洗浄前後でモルフォロジーがほとんど変化しないペプチドもあった。これらを足場ペプチドとして、今後の実験を進めていく。 一方で、ペプチド自己組織化膜上への平面脂質膜の形成は、成功はするものの、まだ歩留まりが悪い。また、2重膜を形成スべきところであるが、多層膜が形成されることも観測により分かった。脂質の種類も含め、脂質膜形成のプロセスを見直す必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ペプチドの自己組織化構造の設計および評価において、当初は原子間力顕微鏡と走査型トンネル顕微鏡を使用する予定であったが、走査型トンネル顕微鏡を使用した実験では、有効な画像を再現性よく観測することができなかった。これは、自己組織化ペプチドが電圧印加下において構造が不安定になることを示唆している。一方で、原子間力顕微鏡を用いた実験では、液中で高空間分解の画像の取得に成功し、自己組織化ペプチドが数ナノメートルの間隔で規則正しく整列したナノワイヤー構造が緻密に整列した構造であることがわかった。また、その周期は、使用するペプチドによって異なることも観測から明らかになった。 また、液中で安定なペプチドの開発に成功した。これらのペプチドは、ペプチド間の相互作用が強い上に、2次元ナノ材料表面との相互作用も強いため、厚さがそれまでのものに比べて薄い自己組織化膜を形成することがわかった。 一方で、脂質膜の形成には課題が残る。脂質のガラス転移点によって、自己組織化ペプチド膜上での平面脂質膜の形成頻度が異なることが示唆される結果が得られた。今後は、脂質膜形成の時間や温度もふくめ、脂質の種類を複数検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
脂質膜中のイオンチャンネルを介したイオン伝導の計測 1:2次元ナノ空間におけるイオン伝導観測(光学測定):2次元ナノ空間に閉じ込められたイオンによる原子薄膜の電子物性変化を最も簡便に観測する方法は光学測定である。油浸レンズを用いたMoS2の高空間分解発光イメージングを行う。イオンがイオンチャネルから原子薄膜と脂質二重膜の平面空間に侵入した際に、空間的にイオンがどのように閉じ込められたかを観測し、そこから水平方向にイオンが拡散・伝導する様子を観測する。同時に、MoS2からの発光スペクトルを観測することにより、イオンによってMoS2内の電子状態が受ける変調を励起子や荷電励起子などの発光ピークから検証する。 2:MoS2の電気化学的電界効果型トランジスタ(電気測定):将来のバイオセンサ応用を考える際、勘弁かつ迅速な検出手段である電気伝導によるセンシングは不可欠である。そのため、原子薄膜の電気化学的電界効果型トランジスタ構造を形成する。これは、液中に白金参照電極を挿入し、原子薄膜に電圧を印加することによって、原子薄膜内の電子濃度を変調し、デバイスのスイッチングを行うものである。モデル計算を用い、2次元ナノ空間に閉じ込められたイオン濃度を伝導特性から定量的に見積もる。これにより、本センサ機構が既存のものと比して感度やノイズ低減の点で優位性があることを実証する。
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