2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of time resolved THz-STM
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16H05982
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
吉田 昭二 筑波大学, 数理物質系, 助教 (90447227)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 走査プローブ顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に問題となっていたトンネル電流ノイズとシステムの不安定性を改善するため、平成29年度前半期にシステムの大幅な改定を行った。下記に詳細を示す。 1.トンネル電流ノイズの低減 THz-STMではTHzパルス照射によって生じる瞬間的なトンネル電流を用いて時間分解計測をするものであるが、この電流量が大きいとSTMトンネル接合が不安定になり試料表面や探針の破壊されるという問題があった。この問題を回避するための対策として、トンネル電流検出回路の低ノイズ化を行い低いトンネル電流条件での測定を可能にした。その結果、長時間安定にTHz電流を検出することが可能になった 2.光学システムの最適化 時間分解計測では、光パルスをポンプ光、THzパルスをプローブ光として用いる。これまでの光学系では光パルスとTHzパルスをそれぞれ別の角度からSTMトンネル接合に集光し測定を行っていたが、両パルスを同軸にそろえて同じレンズを使用して集光する方式に変えることで、光軸にアライメントを容易にした。これによって精度の高い光軸、スポット位置の調整が可能になった。 上記改善に加えて、探針先端のTHz近接場を光電子を用いて計測する方法を開発し、実際に測定に用いるSTM探針の先端に生じるTHz近接場の計測を行った。さらに時間分解STMを用いた、試料の光励起ダイナミクスにも成功した。Bi2Se3表面では、光励起されたホットエレクトロンのダイナミクスの観察に成功し、1T-TaS2表面では、光誘起相転移のダイナミクスをピコ秒の時間分解能で計測することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点で装置の開発はほぼ完了し、当初目的とした実験に部分的に成功してきており、順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度より、時間分解THz-STMを用いてIRパルスにより励起した試料の励起状態とその超高速ダイナミクスを原子スケールでイメージングを行う。前期はそのために必要な装置改良を行う。29年度の実験により、IRパルス照射時にIRレーザー強度やレーザースポット位置の揺らぎに伴い発生するトンネル電流のノイズが大きく、IRパルス照射しながらの安定な原子分解STM像の測定が難しいことが課題となっていた。 そのため、30年度はまずレーザー強度・スポット位置の安定化を進める。 レーザー強度安定化のために、レーザー強度計と液晶波長板を用いたレーザー強度安定化装置を構築してレーザー強度の監視と安定化のためのフィードバック制御を行う。 スポット位置安定化のための対策として防音ブースを構築し、レーザー光学系、STM全体を含めて防音、防風対策を行う。音・空気の流れが及ぼす光学系やSTM装置への機械的な振動を抑えることでレーザースポット位置の安定化を行う。 これらのシステム改良の後に1T-TaS2試料を用いてIRパルス光により誘起される電荷密度波相転移の高速緩和過程を実空間観察を行う。
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Research Products
(5 results)