2017 Fiscal Year Annual Research Report
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16H05983
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉松 公平 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (30711030)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 酸化物薄膜 / 超伝導 / パルスレーザ堆積法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は作製した単純チタン酸化物薄膜の物性評価を進めた。超伝導を示すgamma型Ti3O5薄膜とTi4O7薄膜では、抵抗率の温度依存性からゼロ抵抗を、磁化の温度依存性からマイスナー効果を観測し、バルク超伝導であることを明らかにした。パルスレーザ堆積法を用いた薄膜合成と放射光X線回折を用いた詳細な構造評価、電気磁気測定による超伝導特性を合わせてこれらの結果がScientific Reports誌に掲載された。 TiO, Ti2O3, gamma型Ti3O5共晶薄膜においては、SPring-8を用いた放射光X線回折と透過型電子顕微鏡により薄膜組成と構造評価を行った。X線回折測定による定量解析から、各相の組成比率を算出し、超伝導を示す共晶薄膜においてはgamma型Ti3O5の割合が多いことを明らかにした。電子顕微鏡観測により薄膜の内部構造を直接観測したところ、基板との界面ではTi2O3相のみが形成され、その上部ではTiOとgamma型Ti3O5の共晶という2層構造が形成していることが明らかになった。界面でTi2O3層が形成される理由として、基板に同一結晶構造であるAl2O3を用いているためと考えられる。基板のエピタキシャル力の弱くなる薄膜上部では、アニールによりTiOからgamma型Ti3O5への変化が起こっていると結論づけた。これら共晶超伝導の結果がJ. Appl. Phys誌に論文として掲載された。 Ti4O7薄膜については、イオン液体を用いた電界効果により超伝導相の制御も行っている。現在までに、サイドゲート型のデバイス作製は達成しているものの、電界効果による物性制御は実現していない。引き続き条件を検討して研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本科研費申請時の計画の中心であったチタン酸化物薄膜超伝導について、ゼロ抵抗とマイスナー効果によりバルク超伝導であることを明確に示すことができ、論文掲載までたどり着くことができた。また、計画では想定外であった共晶薄膜の超伝導についてもその組成と構造評価を達成し、論文掲載となった。本研究計画の最後の1つであるTi2O3についても今年度中に研究成果が得られる見込みが立っており、予定通りに順調に計画が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である今年度は残された単純酸化チタン材料のTi2O3について研究をまとめる方針である。Ti2O3薄膜ではバルクを超える金属絶縁体転移温度や転移前後での巨大な抵抗率変化、大きな伝導率の異方性を見出しており、これらを電気特性評価により詳細な解析を行うとともに結果を論文にまとめる予定である。また、Ti4O7薄膜超伝導については、イオン液体を用いた電界効果による変調についても引き続き研究を進め、外場による超伝導-絶縁体転移の実現を目指す予定である。
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