2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H05988
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 剛仁 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (70452472)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | プラズマ誘起ミクロ液相反応 / インクジェット / プリンティング / フレキシブルデバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、プラズマ生成活性種が引き起こす液相内反応である“プラズマ誘起液相反応”は、バイオ応用、材料合成応用、環境応用などでの新展開をもたらし、プラズマ応用における世界的な潮流の一つとなっている。本研究では、プラズマ誘起液相反応の更なる飛躍によりプラズマ応用分野の継続的発展を目的とし、ミクロ液相(数~100 μm 程度の液滴)を反応空間とする“プラズマ誘起ミクロ液相反応”の学術基盤構築に取り組んでいる。制御されたミクロ液相の適用により、「界面現象の増大」や「疑似的に閉じた制御性の良い液相反応空間」の実現が可能である。 該当年度である2年度目には、初年度に引き続き(1)多数のミクロ液相を含むミスト含有雰囲気におけるミクロ液相をマイクロリアクターとみなしたプラズマ誘起粒子合成、(2)インクジェットヘッドによる高い再現性を伴うミクロ液相生成システムを用いたプラズマ誘起ミクロ液相反応系の構築、(3)それを用いたプラズマ支援プリンティング技術の開発、および(4)再現性の良い分光診断システムの構築に取り組んだ。 (1)に関しては、特定の条件範囲において組成やサイズを制御したMg-Zn系のナノ粒子合成に成功した。 (2-4)に関しては、インクジェットを用いたプラズマ誘起ミクロ液相反応システムを構築し、それを用いたフレキシブル基板上へのプラズマ援用銀配線描画プロセスを実現した。プラズマ未使用時に比べて解像度が高い描画を、単一プロセスで短時間の間に行える可能性を示した。更に、上記プロセス装置とレーザーや分光器等の測定系との同期をとることにより、時空間ともに再現性が良い測定を可能とし、それを用いたラマン分光等の振動分光計測に着手し、系統だったスペクトルの取得を可能とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では(ア)プラズマ誘起ミクロ液相反応プロセス診断と、(イ)制御性の高いナノ粒子合成およびプリンティングプロセス開発、更には(ウ)両者を通じた反応メカニズムの解明に取り組む計画である。該当年度においては、(ア)、(イ)において着実な成果を挙げることができた。研究論文や学会発表などの目に見える成果に結び付いている。メカニズム解明に向け、更なる計測の推進が望ましかったものの、プリンティングプロセスにおける優位性の提示ができ、また再現性の良いミクロ液相とプラズマとの観測システムも構築できており、総合的に、ほぼ当初予定通りに進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、(ア)プラズマ誘起ミクロ液相反応プロセス診断と、(イ)制御性の高いナノ粒子合成およびプリンティングプロセス開発、更には(ウ)両者を通じた反応メカニズムの解明に取り組む。特に、インクジェットヘッドによる高い再現性を伴うミクロ液相生成システムを用いたプロセス開発及びプロセス診断に重点的に取り組む。 (ア)プロセス診断:インクジェットヘッドとプラズマとの相互作用をもたらすプロセス装置と測定系との同期をとることにより、時空間ともに再現性が良い測定を可能としており、それを用いた振動分光や発光・吸収分光を展開していく。プラズマの有無、ミクロ液相の有無による変化を詳細に計測することにより、プラズマがミクロ液相におよぼす影響およびミクロ液相がプラズマにおよぼす影響を明らかにする。また、界面選択性の診断も駆使することで、界面の影響が大きくなるミクロ液相とプラズマとの相互作用について理解を深めていく。 (イ)プロセス開発: 昨年度までに、特定の条件範囲においてMg-Zn系のナノ粒子合成に成功しており、更なる組成やサイズの制御性の付与に取り組む。また、プリンティングプロセスにおいては、各種配線描画における詳細なプロセス診断および最適化に取り組むとともに、有機材料等の描画にも発展していく。実際に、プラズマ支援インクジェットプロセスを用いたフレキシブルデバイス作製を通じ、新規プリンティング技術としてのプラズマ支援インクジェットプロセスを確立する。 (ウ)密度汎関数法、分子動力学法、粒子計算法等の計算シミュレーションを用い、プラズマ―液相相互作用のメカニズム解明に迫るとともに、新たなアプローチとしての機械学習によるプラズマ・プロセス診断へと結び付けていく計画である。
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