2017 Fiscal Year Annual Research Report
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16H05997
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
左近 樹 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (70451820)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 実験天文学 / 星間ダスト / ダスト合成実験 / 未同定赤外バンド / 新星 / 赤外線天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、国際宇宙ステーションきぼう実験棟簡易曝露実験装置ExHAMを用いた曝露実験について、2017年10月に最後の曝露実験サンプル(EE64-III)が地上に帰還し、全サンプルの曝露実験および試料の回収が完了した。これに併せて、主として炭素質ダストの試料に対して、2016年度に本研究経費を使って導入した赤外顕微分光装置を用いて、中間赤外線透過/反射/ATR等の測定を実施し波長2-15 micronの赤外分光特性を調査した。結果の一部は、JAXA筑波宇宙センターにおける初期成果報告会、日本天文学会2018年春季年会および第61回宇宙科学技術連合講演会において成果発表を行った。また、搭載試料のうちのシリケイトダストの分析には、より長波長側の20ミクロンまで測定を必要とするが、平成28年度に本経費で導入した既存の顕微赤外線分光装置では検出器が波長16ミクロンまでに対応する仕様であったため、平成29年度末に、本経費でワイドバンドMCT検出器を導入した。また、赤外分光特性に変化が見られた試料に対して、XANES(X線吸収端構造)分析を行うために、分子研の共同利用研究の枠で時間要求を行い、平成30年度のマシンタイムを獲得した。 次に、地上大型望遠鏡に搭載される中間赤外観測装置を用いて実施する新星や終焉を迎える大質量星など活発な質量放出とダスト形成を伴う天体の継続観測を並行して進め、赤外線天文衛星あかりの中間赤外および遠赤外線全天サーベイのデータを用いて、過去の新星爆発の該当する位置に観測されるダスト放射を調べ、新星爆発に伴って形成されるダストの特性を観測的に制限し、その結果を第4回あかり国際研究会で発表した。 本研究成果は次世代赤外線ミッションであるSPICA、JWST、OSTによる天文観測にとって有用であり、それらのサイエンス検討および装置検討作業へのフィードバックを与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験研究の範囲では、国際宇宙ステーションきぼう実験棟簡易曝露実験装置ExHAMを用いたダストの曝露実験において、当初予定していた全試料の曝露実験が完了し、また、無事に国際宇宙ステーションから地上に帰還の後、筑波宇宙センターにて引き渡しが完了した。試料の分析に着いては、順次、赤外顕微分光分析を進めるとともに、さらに必要な分析のマシンタイム確保も順調に進められた。また、並行して進めるダスト凝縮実験でも窒素含有炭素質物質に対する新しい見知が得られており、その結果をもとに、現在すばる望遠鏡共同利用の枠組みで観測提案を行っている。観測手法による研究としては、赤外天文衛星あかりの中間赤外および遠赤外全天サーベイデータを用いた過去の新星爆発に付随する赤外放射の調査を実施し進捗を得た。以上から、当初の予定通り、概ね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の主軸となる国際宇宙ステーション「きぼう」実験棟の船外簡易曝露装置ExHAMを用いたダストの宇宙環境曝露実験「炭素質ナノ粒子の宇宙風化と有機物進化過程の解明(QCCプロジェクト)」では、これまでに合計30種以上の実験試料を搭載した、合計3つの曝露実験サンプルが、1年間の宇宙環境曝露の後全て回収され、平成28年度に本経費で導入した既存の顕微赤外線分光装置を用いて、これまでに主として炭素質ダストの曝露前後での物性変化の分析を実施した。但し、導入当初の装置仕様では検出器が波長16ミクロンまでに対応するものであったため、搭載試料のうちの、より長波長側の20ミクロンまで測定を必要とするシリケイトダストの分析が未完了であった。このため、平成29年度末に、本経費でワイドバンドMCT検出器を導入した。本年度は、宇宙曝露実験の全試料の赤外線特性測定をこれらの新規測定機能を利用して実施する。さらに、電子顕微鏡観察や本年度に分子研の共同利用研究の枠でマシンタイムを取得したXANESによる測定を実施する。また、一部の試料に着いては、紫外線反射測定等の分析を実施する。これらの結果をもとに、本曝露実験の研究を総括し論文にまとめる。さらに、地上大型望遠鏡に搭載される中間赤外観測装置を用いて実施する新星や終焉を迎える大質量星など活発な質量放出とダスト形成を伴う天体の継続観測を実施する。この際、NASA ARCのAndrew Helton氏の協力のもと、SOFIA/FORCASTの観測データと併せた複数観測時期での効果的な観測研究を実施する とともに、カリフォルニア工科大学のRyan LauらのJWSTのプログラムに参画し、ダスト形成過程の研究を実施する。また、研究協力者の尾中敬とともにJWSTの観測提案策定を実施するとともに、あかり衛星などの既存のデータを活用した観測と実験の融合研究を推進する。
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Research Products
(12 results)