2016 Fiscal Year Annual Research Report
冬季雷雲の放射線マッピング観測で解明する雷雲電場による粒子加速と高エネルギー現象
Project/Area Number |
16H06006
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
榎戸 輝揚 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (20748123)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 雷雲ガンマ線 / 粒子加速 / 冬季雷雲 / 電子加速 / 電場 / 光核反応 / 雷放電 / TGF |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、雷雲電場により電子が相対論的領域まで加速された際に生じる制動放射ガンマ線を、地上に設置した射線線測定器を用いて測定し、天然の電子加速器の誕生、発展、消滅までを動的にマッピングし理解することを目指している。2017年度には以下の研究進捗を得た。 1. 多地点設置を可能にできるように安価で購入でき、小型で Raspberry Pi と組み合わせて運用できる FPGA/ADC ボードと、前段増幅器や高圧モジュールなどを搭載したフロントエンドボードを開発した。プロトタイプモデルと合わせて、実際に夏季の高山観測や、冬季の金沢市、小松市、能登半島の珠洲市、柏崎にて利用した。 2. 夏季には乗鞍岳宇宙線観測所(2016/7/10-9/26)や富士山山頂(2016/7/15-8/28)において放射線計測を行った。明確な雷雲同期現象は検出できていないが、宇宙線研究所共同研究のサポートも得て、電源ケーブルを乗鞍岳に埋設して長期の観測体制を構築した。 3. 日本海側の冬季雷雲を対象に、9-10月にかけて金沢大学、金沢大学附属高校、金沢泉丘高校、小松高校、サイエンスヒルズこまつ、柏崎刈羽原発、金沢大学能登学舎(珠洲市)などに開発した放射線検出器を設置して長期観測を続けている。 4. 冬季雷雲からのガンマ線を2016年12月8日、9日にかけて金沢から小松にかけての複数地点において検出した。それぞれの観測装置での継続時間は35-97秒ほどで、検出光子数は290-3,400個ほどであった。ガンマ線は15MeV以上まで伸びていた。修士論文としての成果や、2017年度春季物理学会で発表した。また、開発した専用ボードを利用した検出器は柏崎刈羽原発に設置され、2017年1月16日、2月6日には雷雲活動に由来する可能性の高い、継続時間が数十ミリ秒の短時間バースト現象も検出できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新規の FPGA/ADC ボードの開発が終了し、民間企業から製品として販売され、複数の大学や研究所においても使われるようになった。また、観測装置は実際に日本海沿岸に複数設置され、科学研究に十分に耐える複数の雷雲ガンマ線イベントの検出に成功し、修士論文のデータとしても使われた。さらに、柏崎に設置した装置からは雷放電の後に、 511 keV ガンマ線信号の兆候を検出した。これは陽電子の存在を示すと考えられ、大気中での強力なガンマ線と窒素の光核反応で生じる、不安定同位体13Nの崩壊で生じる陽電子を検出している可能性を中心に解析している。
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Strategy for Future Research Activity |
複数の雷雲関連の高いエネルギー現象を検出できたため、解析を進める。また、平成28年度に開発してきた読み出しボードを基本とし、CsI 結晶と光電子増倍管からなる標準観測モジュールを増設して、金沢と小松のエリアに追加の観測点を増やす。そのために、金沢の高校や大学、民間企業の協力を取り付ける。同時に、多地点観測を拡充するため、より小型な可搬型検出器の開発と展開も進める。雷放電の際の強力なガンマ線が大気中の窒素と光核反応して生じる、中性子や、同位体13Nの崩壊時に生じる陽電子を検出できるような装置の開発も進める。
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Research Products
(4 results)