2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H06007
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
新山 雅之 京都産業大学, 理学部, 准教授 (90455361)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ハドロン物理 / 放射線検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々の身の回りの物質の質量の大部分を担っている核子の質量の起源はカイラル対称性の破れであるとされているが、実験的な検証はなされていない。最近の理論研究では η′中間子の質量はカイラル対称性の破れの変化に鋭敏に反応し、原子核中でカイラル対称性の破れが部分的に回復し η′中間子の質量が非常に軽くなるとされている。このような大きな質量変化を観測すれば、中間子や核子等のハドロンの質量生成がカイラル対称性の破れによって引き起こされているという直接の証拠となる。本研究ではガンマ線を用いて η′中間子を水素標的や原子核標的中に生成する。η′中間子生成の素過程を明らかにし、η′中間子を束縛した原子核を探査することが本研究の目的である。 本研究では SPring-8 の LEPS2 ビームラインで高輝度ガンマ線を用いた η′中間子生成とη′中間子束縛核の探査を行う。当該年度では取得済のデータを用いたη′中間子束縛核探査の解析と、新たなデータ取得に使用する高時間分解能検出器と読み出し回路の性能評価を行った。また、検出器全体の較正用のデータ取得を行った。本研究で用いる飛行時間検出器は高抵抗板検出器と呼ばれる検出器で、読み出しストリップが 2cm x 200cm と非常に長く、少ないチャンネル数で大面積を覆えることが特徴である。長いストリップ中を信号が伝搬する際に信号が劣化することが問題になっていた。我々は高抵抗板検出器中の誘電体の誘電率を最適化し信号の劣化を抑えることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
取得済みのデータを用いたη′中間子束縛核の探査の解析も順調に進んでおり、最終結果の公表に向けて、理論研究者との議論を進めている。バックグランドとなるη中間子の光生成反応の解析も進んでおり、核子の高スピン励起状態の寄与が確認できた。また、新たなデータ取得のための検出器開発についても時間分解能の劣化やノイズ等の問題を克服し、目標性能を達成できることを確認できた。 これらの結果について、複数の学会、国際会議での報告を行なった。研究進展状況は概ね順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに開発した高時間分解能検出器について性能評価の結果をまとめ、海外の研究雑誌等で公表する。データ取得に必要な全台数を制作し、本実験用の検出器を完成させる。データ取得を速やかに進めたい。 すでに取得したデータでのη′中間子束縛核とη′中間子生成の測定についても結果をまとめ研究雑誌等で論文発表する。
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Research Products
(3 results)