2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H06007
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
新山 雅之 京都産業大学, 理学部, 准教授 (90455361)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 原子核物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
物質の質量の 99 %は強い相互作用によるクォーク凝縮 (カイラル対称性の破れ) によって生じると考えられている。さらに、原子核中ではカイラル対称性の破れが部分的に回復し、ハドロンの質量が軽くなると理論的に予想されている。本研究の目的はこの質量生成メカニズム実験的に検証する事である。近年の理論研究でη′中間子に対しては特にカイラル対称性の破れの影響が強く原子核中で質量が非常に軽くなり、η′ 中間子束縛原子核を形成し得る事が指摘されてきた。このようなη′中間子束縛原子核を発見できれば、原子核中でのカイラル対称性の破れの部分的な回復の実験的な証拠となる。 そこで、本研究ではスプリングエイトの高輝度ガンマ線ビームラインで、η′中間子束縛原子核の探査を行った。水素標的からのη′ 中間子生成に加えて、炭素原子核からのη′中間子生成の断面積を測定する事で、生成率の絶対値についての理論的な不定性を除去する事に成功した。 さらに、η′中間子束縛原子核の崩壊で生じると予想される娘粒子を検出する事で背景事象を除去する事ができた。データ解析時には信号領域をマスクして解析に恣意性が入らないように工夫し、十分な検出器較正の後、信号領域のデータを確認した。 解析の結果、本研究では η′中間子束縛核の信号は見えなかった。そこで、 η′中間子束縛核の生成断面積の上限値を導き、η′中間子と原子核の間の引力の強さに制限をつける事に成功した。我々の研究結果から、η′中間子と原子核の間には非常に強い引力は働いていない事が明らかになった。この結果を論文にまとめ、米国の物理雑誌であるフィジカルレビューレターズに掲載した。本研究によって、η′中間子と原子核間の引力ポテンシャルについて重要な結果を得る事ができた。この結果は原子核中のカイラル対称性の破れの回復と中間子の性質について理解するための重要な情報となる。
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Research Progress Status |
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(4 results)