2016 Fiscal Year Annual Research Report
原生代-顕生代境界における微生物炭酸塩転換イベントの解明
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16H06022
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
白石 史人 広島大学, 理学研究科, 助教 (30626908)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | シアノバクテリア / 細胞外高分子 / ストロマトライト / スロンボライト |
Outline of Annual Research Achievements |
シアノバクテリアの細胞外高分子と石灰化の関係を明らかにするため,まずPhormidium sp.とLeptolyngbya sp.の培養を行い,予察的に細胞外高分子(EPS)の酸解離定数測定および石灰化実験を行った.その結果,どちらのシアノバクテリアも光合成によってCaCO3飽和度を上昇させたが,酸性官能基密度の低いLeptolyngbya sp.はほとんど石灰化しないことが明らかとなった.このことはEPSの酸性度が堆積組織形成に重要な役割を果たしていることを示している. この結果の天然環境における妥当性を評価するため,岡山県高梁市上野に見られるストロマトライトとスロンボライトの調査も行った.水化学組成,鉱物組成,および微生物代謝の影響(主に光合成誘導沈殿)については,両堆積物で有意な差は見られなかった.一方,DNA解析および顕微鏡観察により,それらを構成するシアノバクテリアが大きく異なることが示された.ストロマトライトはEPSの酸性官能基密度が高いPhormidium sp.が優勢であり,それらの石灰化によって葉理組織が形成されていた.一方,スロンボライトはEPSの酸性官能基密度が低いLeptolyngbya sp.と高いCoelosphaeriopsis sp.が優勢であり,それぞれ窓状構造とペロイドを形成し,結果として凝集組織が形成されていた.収束イオンビーム加工切片などを用いた透過型電子顕微鏡および走査型透過 X 線顕微鏡の観察から,Phormidium sp.とCoelosphaeriopsis sp.のEPS表面に方解石(一部にあられ石用非晶質CaCO3前駆体)が形成されていた.これらの結果は上述の室内実験の結果を強く支持している. 天然環境で得られた結果については,日本地球惑星科学連合2016年大会で発表を行い,また論文も投稿中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は予定通りシアノバクテリアの培養,細胞外高分子特性の評価,微小電極測定,過型電子顕微鏡・走査型透過 X 線顕微鏡・共焦点レーザー走査顕微鏡による観察を一通り行うことができた.また天然環境における検討では,球菌状シアノバクテリアによるペロイド形成が証明されるなど,予想を超えた成果も得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は研究計画に基づき,室内実験の精緻化および検討対象の拡大を行う.前者に関しては,酸化解離定数測定の自動化によって精度よく酸性官能基の定量ができるようにし,またEPS分離法を確立することで石灰化におけるEPSのみの影響を評価できるようにする.後者に関しては,EPS内部が石灰化するScytonema sp.や,明瞭なEPSを持たないSpirulina sp.を含む数種を検討対象とし,EPSの有無や内部構造の影響を評価する.
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Research Products
(1 results)