2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a spectroscopy beyond the time-energy restriction and microscopic approach to solvation dynamics.
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16H06028
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
宮崎 充彦 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (00378598)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 分子分光 / 時間分解赤外分光 / 溶媒和クラスター / 溶媒和ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、単独のレーザーでは実現困難なエネルギーと時間分解能の両立をナノ秒レーザーによる状態選択性とピコ秒レーザーによる時間分解能を組み合わせた新たな分光法の開拓により実現し、光励起に伴う溶媒和構造変化ダイナミクスを実時間観測し、そのメカニズムを明らかにすることを目的とする。 平成29年度は昨年度回復調整を終えたピコ秒レーザー装置の最終調整を行い、それを用いた測定を進めた。昨年度までに確立したナノ秒+ピコ秒の二種類のレーザーを用いる測定については、イオン状態への適用について昨年度仕上げることができなかった分の測定を終えることができた。 これまでの溶媒分子を一つだけ持つ系から進めて、二つの溶媒分子を持つクラスターのイオン化誘起ダイナミクスへの適用も行なうことができた。特に長年の課題であった、(2|0)型のフェノール‐アルゴン1:2クラスターのイオン化誘起ダイナミクスの実時間測定に成功した。 一方で、本研究の中心課題である中性状態のダイナミクス、および複数の溶媒分子を含む系への進展に向けて研究を進めているCPDS-水2クラスターの光励起に伴う励起状態電荷移動および溶媒再配向ダイナミクスの実時間観測に関しては、ナノ秒レーザーとの組み合わせなどを試みたが目標としてきたCN伸縮振動やCH伸縮振動をプローブしたダイナミクスの測定が予定していた通りには進まなかった。吸収強度の低下およびクラスター生成条件の最適化に課題があると考えられ、より一層精緻な実験が必要である。温度条件の最適化、レーザー発振条件の確認法の高度化が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に確立した測定法の応用としてのイオン状態の測定については、当初の予定をほぼ達成することができた。ナノ秒レーザーとの組み合わせは、振動の安定化、調整の簡易化など測定に対し大きなメリット持つことも実証された。中性状態のダイナミクスなどさらなる展開に関してはより一層の改善が必要であることもこの時期までに明らかにすることができた。これまでの測定データの多くを公表できた(論文7報)ことからもこの評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
高度な測定を確実に成功させるため、ピコ秒レーザーの発振状態をより精緻、かつ簡便に確認調整する方法の確立が不可欠である。とくに赤外パルスの波長分解能の確認に超音速ジェット法を必要としない方法として、適当な分子の赤外吸収を用いる手法を開発する。 その上で、今年度からの課題として積み残したCPDS水和クラスターや複数溶媒のダイナミクスの測定を行い、基本的な励起法を用いる測定に関しては確実に測定を行えるよう、装置、測定法を確立する。さらに、S1電子励起状態における振電準位や誘導放出を用いたS0振動励起状態からのダイナミクスおよびその検出など、提案した課題への進展を図る。
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Research Products
(16 results)