2016 Fiscal Year Annual Research Report
ブロック共重合体のミクロ相分離構造中における化学結合点の3次元可視化技術開発
Project/Area Number |
16H06040
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
樋口 剛志 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (50547304)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 高分子構造・物性 / ミクロ相分離 / クリック反応 / 電子線トモグラフィ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ブロック共重合体中の化学結合点に電子顕微鏡で直接観察可能な可視化点を導入し、3 次元電子顕微鏡法によって化学結合点の空間配置を明らかにすることで、ミクロ相分離構造を分子レベルで解明にすることを目的としている。本年度は、本研究の最も重要かつ出発点である化学結合点修飾ポリマーと可視化点として用いる金ナノ粒子の合成を行った。 具体的には、ジブロック共重合体(Poly(styrene-b-2-vinylpyridine): PS-b-P2VP)を合成する際に、PS鎖とP2VP鎖との化学結合にアルキンを導入した。第一ブロックであるPS鎖をリビングアニオン重合により合成した後、アルキンをシリル系保護基により不活性化した置換基を有するジフェニルエチレンで一旦重合反応を停止した。さらに、第二ブロックであるP2VPを重合した後に、シリル系保護基の脱保護反応を行うことで、化学結合点にClick反応可能な官能基を有する目的のジブロック共重合体を得た。本年度は、最も単純な構造であるラメラ構造を形成するブロック比率で分子量約20万のポリマーの合成に成功した。 また、ポリマー鎖中のアルキン基と選択的に反応するアジド基を有する金粒子を、液ー液2相系による合成法を用いて作製した。金粒子表面は長鎖アルカンチオールと末端アジド化アルカンチオールを任意の割合で有する金粒子を合成した。また、金粒子表面を長鎖アルカンチオールからトリエチレングリコールに変更した金粒子もあわせて合成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ミクロ相分離構造中でブロック共重合体1分子の直接観測するために必要な化学結合点修飾ポリマーおよび相補的な官能基を有する金粒子(可視化点)の合成に注力した。当初の予定通り、ポリマーと金粒子の合成に成功していることから、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に引き続き、ジブロック共重合体の分子量および金粒子の粒径についての最適化を行うとともに、以下の2つの項目について検討を行う。 (1)ジブロック共重合体への可視化点導入 アルキン基とアジド基を用いたクリック反応は、代表的なクリック反応であり、化学・生化学分野において数多くの報告があることから、技術的な問題は少ないと予想している。具体的には、前年度で合成したアルキン基を化学結合点に有するジブロック共重合体とアジド基を有する金粒子を金属触媒(CuまたはRu触媒)の存在下で反応させることで、ジブロック共重合体の化学結合点に共有結合(トリアゾール環の形成)によって可視化点を導入する。 (2)可視化点を有するジブロック共重合体フィルムの透過型電子顕微鏡観察 (1)で合成した化学結合点に金粒子(可視化点)を有するジブロック共重合体のキャストフィルムを作製し、内部構造を透過型電子顕微鏡を用いて観察を行う。特に、電子線照射ダメージに気を付けることで、次年度に予定されている電子線トモグラフィー観察に向けた予備検討を行う。
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