2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H06044
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
新井 敏 早稲田大学, 総合研究機構, 次席研究員(研究院講師) (70454056)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 蛍光イメージング / 蛍光温度センサー / ATP / 温度生物学 / バイオイメージング / 蛍光プローブ |
Outline of Annual Research Achievements |
恒温動物は無論、変温動物の中にも、自らが積極的に熱を産生し、生体組織全体の温度を上昇させて、生命活動を制御している種がいることがわかってきた。しかしながら、細胞レベルで発生した熱が、どのように多細胞の組織レベルまで伝播していくのか、そのミクロからマクロの階層を貫いた温度の時空間動態は未だハッキリしていない。本提案では、高感度の極小サイズの蛍光温度センサーを開発し、恒温・変温動物の高解像度温度マップを作成することを目標とする。 当該年度は、蛍光温度計のセンサー感度の向上に着手した。温度が1℃変わるとき、どれくらい蛍光強度が変化するか(%/度)を指標とした。今まで得られている分子サイズの蛍光温度計に関して、骨格となる色素の官能基の変換を行い、その化学構造と温度感受性の相関解析を共同研究者と共に行った。相関解析の結果、温度感受性の鍵となる構造を突き止めることができた。しかしながら、今まで到達している感受性の3.9(%/度)から、その値は幾分向上したものの、大幅な改善には至っていない。 感度の向上の取り組みと併行して、現在得られている蛍光温度計の構造を元に、動物組織の蛍光イメージングに適した形への機能拡張に取り組んだ。組織に対する侵襲深度の高い励起光でのイメージングができるように、蛍光温度計とFRETペアになる2光子吸収用の色素を結合した。結果、設計のねらい通り、2光子吸収用の色素から効率よく、エネルギー移動が生じる温度計分子の合成に成功している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究期間全体の構想の中で、温度に対する感受性と特異性(温度以外のパラメータに応答しないこと)の向上は不可欠である。現在までに、若干の向上は見られたものの、大幅な改善には至っていない。そこで、温度情報を蛍光強度に変換する原理から抜本的な見直しを行う(当該年度の後半から既に開始している)。当初の計画では、初年度で感度の改善は終了する予定であったが、期間全体を通しての試みとして計画を見直し、引き続き継続する。温度感受性の高い色素が得られた時点で、それを組織イメージング用の材料へと変換していく。また、様々な熱産生の細胞を用いてのイメージングは、研究代表者が主体的に行う予定である。色素の構造相関解析や化学合成部分の一部は、共同研究者の協力を得ながら進めていく。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度も、蛍光温度計の温度センサー機能の感度の向上と、組織サンプル測定に適した機能の拡張の試みを継続する。細胞レベルの研究に関しては、今まで用いてきた筋肉や褐色脂肪細胞を導入する。特に、次年度は、共同研究者から、基材加工を行った特殊な培養皿の提供を受け、多細胞の細胞塊を作り実験を行う予定である。変温動物に関しては、甲虫などを用いた実験を行う。新しい蛍光温度計の開発を待たずに、今まで開発してきた既存の蛍光温度計を用いて、組織個体レベルでのイメージング実験も開始しながら、論文成果としてまとめていく。研究計画当初に想定していた共同研究者以外にも、様々な観察対象(生体試料)をもった研究者との協業が広がっているため、熱産生を観察するためのプラットフォーム型の研究へと展開していく。
|
Research Products
(2 results)