2016 Fiscal Year Annual Research Report
色素含有タンパク質の高次集積化による高効率な光の捕集・集約・利用
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16H06045
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大洞 光司 大阪大学, 工学研究科, 助教 (10631202)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 光捕集系 / ヘムタンパク質 / エネルギー移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高効率光エネルギー変換系を指向し、ヘムタンパク質環状多量体を鋳型とする光捕集系の高次集積化とその利用を目的とする。 具体的には色素間での高効率なエネルギー移動を示す人工光捕集系を、化学的な手法で集積化し、さらにエネルギー利用中心を設けることで、光子密度の低い太陽光を「捕集」「集約」「利用」する人工光合成系の構築を試みる。これは天然の光合成系の良いモデルでもあり、化学的あるいは電気的な光エネルギーの抽出を試み、持続可能社会に向けた高効率光エネルギー利用をめざす。 本年度は、異なる吸収波長の利用をめざして、異種色素間でのエネルギー移動を指向し、鋳型となるタンパク質マトリクスの調製、このタンパク質に共有結合的に導入可能なドナー色素の合成を行った。タンパク質マトリクスには、既報のヘムタンパク質6量体HTHPを用いた。部位特異的変異導入法によりHTHPタンパク質表面にシステインを導入した。3種類の変異体を設計し、調製した。ドナー色素としてはマレイミドフルオレセインを選択し、ドナー色素修飾HTHPを調製し、吸収および蛍光スペクトル、質量分析により同定した。続いてヘムを除去した後、アクセプターとなる亜鉛ポルフィリン錯体を挿入し、人工光捕集系を構築した。吸収スペクトルや円二色性スペクトル、質量分析により同定し、蛍光スペクトルや蛍光寿命測定を実施し、詳細な光化学的挙動を調査した。結果として、高い効率でドナー分子から亜鉛ポルフィリンにエネルギー移動が起こることを確認し、新規人工光捕集系の構築を達成した。本成果は学会で発表し、高く評価された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、高効率光エネルギー変換系を指向し、ヘムタンパク質環状多量体を鋳型とする光捕集系の高次集積化とその利用を目的としている。 本年度はその第一段階として、幅広い吸収波長が利用可能な異種色素間でのエネルギー移動を示す人工光捕集系の構築に取り組んだ。タンパク質マトリクスとして、既報のヘムタンパク質6量体HTHPを用い、部位特異的変異導入法によりHTHPタンパク質表面にシステインを導入した。3種類の変異体を設計し、調製した。ドナー色素としてはマレイミドフルオレセインを選択し、変異体と反応させ、ドナー色素修飾HTHPを調製した。吸収および蛍光スペクトル、質量分析により、計画通り化学修飾が起こっていることを確認した。次に、ヘムを除去した後、アクセプターとなる亜鉛ポルフィリン錯体を挿入し、人工光捕集系の構築を実施した。吸収スペクトルや円二色性スペクトル、質量分析により同定し、蛍光スペクトルや蛍光寿命測定を実施し、詳細な光化学的挙動を評価し、エネルギー移動速度と効率を決定した。結果として、高い効率でドナー分子から亜鉛ポルフィリンにエネルギー移動が起こることを確認し、新規人工光捕集系の構築を達成し、計画通りおおむね順調に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度の成果を踏まえて、エネルギー密度の低い太陽光の利用を指向し、励起エネルギーを効率良く多電子酸化還元反応に用いるために、励起エネルギーの「集約」をめざす。この集約のための鋳型となるタンパク質マトリクスの巨大集合体を実施する必要がある。2つの手法でHTHPの巨大集合体の構築に取り組む。1つめは光増感色素の二量体によるタンパク質の架橋による手法である。まず合成化学的にリンカー分子を介して連結した光増感色素二量体を合成し、亜鉛あるいはマグネシウムを導入した分子を調製する。ヘムを取り除いたHTHPとこの光増感色素二量体を混合することで巨大集合体の調製を試みる。2つめは、疎水性分子の導入によるミセル型巨大集合化に基づく手法である。このヘムタンパク質において、タンパク質にシステイン残基は全く存在しないので、部位特異的変異導入法によりタンパク質表面に、疎水性分子を化学修飾するためのシステインを導入する。最適位置を決定するために複数の変異体を設計し、調製する。高い疎水性を示す有機分子や高分子にシステインと高い反応性を示すマレイミド基を導入する。これらの化学修飾によりタンパク質が親水基、有機分子あるいは高分子鎖が疎水基となったミセル状巨大集合体が調製できると考えた。さらにヘムを除去した後、ポルフィリノイド類の亜鉛あるいはマグネシウム錯体等を挿入し、人工光捕集系を構築する。得られる集合体は吸収スペクトルや円二色性スペクトル、質量分析により同定し、蛍光スペクトルや蛍光寿命測定を実施し、詳細な光化学的挙動を調査し、効率の良い人工光捕集系の開発に挑戦する。
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Research Products
(7 results)