2017 Fiscal Year Annual Research Report
色素含有タンパク質の高次集積化による高効率な光の捕集・集約・利用
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16H06045
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大洞 光司 大阪大学, 工学研究科, 助教 (10631202)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヘムタンパク質 / 超分子集合体 / エネルギー移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高効率光エネルギー変換系を指向し、ヘムタンパク質環状多量体を鋳型とする光捕集系の高次集積 化とその利用を目的とする。 具体的には色素間での高効率なエネルギー移動を示す人工光捕集系を、化学的な手法で集積化し、さらにエネルギー利用中心を設けることで、光子密度の低い太陽光を「捕集」「集約」「利用 」する人工光合成系の構築を試みる。これは天然の光合成系の良いモデルでもあり、化学的あるいは電気的な光 エネルギーの抽出を試み、持続可能社会に向けた高効率光エネルギー利用をめざす。本年度は特に「集約」に注目して研究を実施した。エネルギー密度の低い太陽光の利用を指向し、励起エネルギーを効率良く多電子酸化還元反応に用いるためには 、励起エネルギーの「集約」が必要となる。この集約のための鋳型となるタンパク質マトリクスの巨大集合体の調製を試みた。タンパク質マトリクスには、既報のヘムタンパク質6量体HTHPを用いた。巨大集合体の構築は疎水性分子の導入によるミセル型巨大集合化に基づく手法で取り組んだ。このヘムタンパク質において、タンパク質にシステイン残基は全く存在しないので、部位特異的変異導入法によりタンパク質表面に、疎水性分子を化学修飾するためのシステインを導入した。最適位置を決定するために複数の変異体を設計し、調製した。高い疎水性を示す有機分子や高分子にシステインと高い反応性を示すマレイミド基を導入した。結果として、ポリイソプロピルアクリルアミドを修飾したタンパク質は加温により、32度程度で数十nmのミセル状巨大集合体が形成することを明らかにした。さらにヘムを除去した後、ポルフィリノイド類の亜鉛錯体を挿入し、人工光捕集系の構築を実施した。 予備的ではあるが、光捕集能を示すことが確認された。得られた成果は、国内外の学会および学術誌において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、高効率光エネルギー変換系を指向し、ヘムタンパク質環状多量体を鋳型とする光捕集系の高次集積化とその利用を目的とし、本年度は特に「集約」に注目して研究を実施した。集約のための鋳型となるタンパク質マトリクスの巨大集合体の調製を試み、ヘムタンパク質6量体HTHPにポリイソプロピルアクリルアミドを導入し、ミセル型巨大集合化に基づく手法で取り組んだ。まずタンパク質にシステイン残基を部位特異的変異導入法によりタンパク質表面に導入した。最適位置を決定するために複数の変異体を設計し、調製した。システインと高い反応性を示すマレイミド基を末端に有するポリイソプロピルアクリルアミドを化学修飾した。質量分析等の手法により、巨大集合体のビルディングブロックの調製を確認した。次にタンパク質は加温により、32度程度で数十nmのミセル状巨大集合体が形成することが動的光散乱やサイズ排除クロマトグラフィー、原子間力顕微鏡測定により明らかになった。さらにヘムを除去した後、ポルフィリノイド類の亜鉛錯体を挿入し、人工光捕集系の構築を実施した。 予備的ではあるが、蛍光の消光剤の滴定実験から光捕集能を示すことを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、疎水性分子を導入したミセル状集合体の光捕集能の詳細の評価を実施する。さらにそれらを基盤として、光の利用を目的とする触媒部位の導入を試みる。触媒部位については、水素発生触媒として、コバロキシム触媒およびニッケル触媒を設計する。導入法は、静電相互作用を利用する系と共有結合的に複合化する2つの手法を検討する。 まず金属触媒の設計と合成を実施する。静電相互作用により担持する系は、プラスとマイナスに帯電した2種類の触媒を合成する。共有結合的な導入には、タンパク質表面に存在するアミノ基であるリジンへの修飾を指向したヒドロキシスクシンイミドエステルを有する触媒を検討する。次に、光増感剤を含むHTHPと複合化し、触媒能の評価を実施し、効率の良い系を探る。それらを巨大集合体に適応し、光捕集能が触媒能に影響するか、評価する。特に光量の変化と触媒能に注目して評価を行い、また巨大集合体の大きさについても触媒能との相関を調べる。最終的に複数の色素を導入し、光の捕集と集約、利用を実現できるタンパク質による光増感色素集合体と触媒部位の複合体を構築する。 得られる分子や複合体はそれぞれ吸収スペクトルや円二色性スペクトル、質量分析により同定し、蛍光スペクトルや蛍光寿命測定を実施し、詳細な光化学的挙動を調査する。構造の評価はサイズ排除クロマトグラフィーや原子間力顕微鏡を用いて行う。またデバイス等への利用も考え、基板等への固定化も実施する予定である。
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Research Products
(21 results)