2016 Fiscal Year Annual Research Report
熱可塑性半導体エラストマー材料の創製とストレッチャブル電子デバイスへの応用
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16H06049
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
東原 知哉 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 准教授 (50504528)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 高分子合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
先端医療工学や健康・生命維持のための診断技術分野において,生体センサ,超薄型ディスプレイや超薄型太陽電池等を構成する,曲げ・折りたたみ・伸縮可能な有機エレクトロニクス材料が注目されている。これまで一貫して行ってきた半導体高分子材料開発,特に簡便な精密重合法開発や多機能性を持った半導体ブロック共重合体を中心とする材料開発で得られた知見を活かし,高効率半導体高分子材料への高い伸縮性付与を実現し,高分子・有機材料分野における新しい熱可塑性半導体エラストマー材料の創製とストレッチャブル電子デバイスへの応用を目的とした。H28年度は,当初研究実施計画のうち,(1)p型半導体ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)鎖およびオレフィン系エラストマー鎖から構成されるブロック共重合体合成条件の最適化を検討した。具体的には,両末端にアジド基を導入したオレフィン系エラストマー鎖と2当量の片末端にプロパジル基を導入したP3HT鎖とのクリック反応(アルキン/アジドの[3+2]Huisgen環化反応)により,高分子量かつ構造の明確なABA型トリブロック共重合体の合成に成功した。本材料は,フレキシブルデバイスやストレッチャブルデバイスの重要部材と成りうる新しい伸縮自在の半導体高分子として機能することが明らかとなった。得られた半導体高分子膜のひずみ印可時の結晶構造およびミクロ相分離構造の高輝度X線による構造解析の結果より,結晶構造へのひずみの影響は小さく,主に混合相での応力緩和が起きていることが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の当初研究実施計画では,(1)p型半導体ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)鎖およびオレフィン系エラストマー鎖から構成されるブロック共重合体合成条件の最適化についての検討のみを予定していたが,平成30年度に予定していた(3)ブロック共重合体膜の自己組織化構造観察を2年前倒しで検討することができた。特に,これまでなかったブロックシーケンスの新規ポリマー合成の創出が早期に実現できたことと,半導体高分子膜のひずみ印可時の結晶構造およびミクロ相分離構造の高輝度X線による詳細な構造解析を迅速に行っており,これまで不明であったポリマーの構造と応力印加時の相関関係の一部を明らかにできたことは特筆すべき点で,当初の計画以上に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,当初研究実施計画の(2)P3HTに代る高効率半導体高分子およびオレフィン系エラストマー鎖の結合反応の検討を中心に行う。これまで代表研究者らは,P3HTよりも良好なホール移動度0.12 cm2/V/sを示す,小さい5員環構造のチアジアゾールール骨格を含む新規半導体高分子の開発に成功している。ごく最近,P3HTよりも優れた有機太陽電池特性を示す含チアジアゾール半導体高分子の開発にも成功している。電子デバイス効率化のため,これらの材料とオレフィン系エラストマー鎖のブロック化を検討する。また高効率半導体高分子は,一般にAA+BB型モノマーの重縮合を経由して合成されるため,連鎖重合系が確立されている特殊AB型モノマーを使用するP3HTと異なり,ポリマー片末端への反応性基の導入が極めて難しい。そこで,Stilleカップリング重縮合反応時に,両末端にブロモ基を導入したオレフィン系エラストマーを共重合モノマー原料として添加する方法を採用する。
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Research Products
(12 results)