2018 Fiscal Year Annual Research Report
常温溶融錯体に基づく新規イオン液体型イオン伝導体の創製
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16H06053
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
上野 和英 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 特任教員(准教授) (30637377)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イオン液体 / リチウム二次電池 / 電解液 / 溶融錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
リチウム系二次電池の電解液として溶媒和イオン液体の更なる分子設計による機能化を進めた。第一に、ルイス酸であるI2とルイス塩基であるI-アニオンの錯形成による [I3]-を錯アニオンとする溶媒和イオン液体をLiI, グライム, I2を当モル混合することで調製した。また、この際、グライムに非対称性のグライムG4Etを用い、低融点化を達成した。各種分光法により溶融状態および溶液状態での安定な錯イオン[Li(G4Et)]+および[I3]-の形成を確認した。さらに、[Li(G4Et)][I]および [Li(G4Et)][I3]の電気化学測定より、約3 V vs Li/Li+における[I]-/[I3]-アニオンので可逆な酸化還元反応を確認した。この溶媒和イオン液体をカソライトとし、Li金属負極と組み合わせた半液体リチウム二次電池を作成したところ、安定な充放電挙動を示すことを明らかにした。同様に[FeX4]-を錯アニオンとする溶媒和イオン液体のグライムおよび錯アニオンを非対称構造化することより室温で液体のレドックス活性溶媒和イオン液体の調製に成功した。
また、新たな溶媒和イオン液体として、ケトエステル系溶媒を用いたリチウム溶媒和イオン液体を調製した。ケトエステル系溶媒和イオン液体中では、Liイオンがケトエステル溶媒、対アニオンよりも速く拡散する極めて特異的なLiイオン輸送現象が観測され、Liイオン輸送がイオンホッピング、交換によって起こっていることが示唆された。Liイオン溶媒和構造を精査したところ、ケトエステル溶媒の2つの配位サイトが異なる2つのLiイオンに配位した鎖状の配位構造を形成していることが明らかとなり、Liイオンホッピング輸送と溶媒和構造の関係性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、溶媒和イオン液体への酸化還元特性の付与とそのカソライトと利用、分子設計による溶媒和イオン液体の低融点化を達成した。更に、溶媒構造とLiイオン輸送特性を詳しく調べた結果、Liイオンがホッピングする極めて特殊なイオン輸送を発現する溶媒和イオン液体を発見した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で得られた知見を基に、高速Liイオン輸送が可能な溶媒和イオン液体電解質の創出に繋げる。 Liイオンとの相互作用が従来の溶媒に比べて弱く、動的架橋構造を形成し得るマルチ配位サイトを有する溶媒を用いる。すなわち、弱配位性で且つマルチ配位サイトを有する溶媒溶媒を用いた濃厚電解液中で高活性Liイオンを生成させ、配位サイト(溶媒およびアニオン)間のイオンホッピングを促進させる。Liイオン溶媒和と輸送ダイナミクスについて、FT-IRやラマン分光法によるLiイオンの配位環境の調査に加え、電気化学的手法によるイオン伝導率、限界電流値やLiイオン輸率の測定など、実際のリチウム系電解液として重要なパラメータを明らかにする。更に、磁場勾配NMR法による溶媒、Liイオン、対アニオン其々の自己拡散係数の測定も併せ、Liイオン伝導メカニズムの理解を深める。さらに、電極界面における電荷移動過程(Liイオンの脱溶媒和過程)について電気化学的手法で評価し、Liイオン活量(aLi+)との関係性を調べる。
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Research Products
(9 results)