2016 Fiscal Year Annual Research Report
分子内三重項エネルギー移動の制御によるTADF type-IIの実現
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16H06057
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
合志 憲一 九州大学, 工学研究院, 助教 (50462875)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有機半導体 / 有機LED / 発光材料 / 電荷移動状態 / 三重項エネルギー移動 / TADF |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は、電荷移動三重項状態から電子ドナー基や電子アクセプター基に局在する三重項状態への分子内三重項‐三重項エネルギー移動過程を抑制することで、電荷移動三重項状態から電荷移動一重項状態へのアップコンバージョンを発現するために、モデル化合物の設計・合成を行い、物性評価を行った。モデル化合物として、電子アクセプター基としてアントラセン、電子ドナー基としてフェノキサジンを用い、電子アクセプター基と電子ドナー基の波動関数の重なりが異なる様々な位置異性体を合成した。合成した化合物は450 nmから490 nmの間に極大波長を有する青色発光を示し、アントラセンの蛍光波長に比べて長波長シフトしていることから、フェノキサジンからアントラセンへの電荷移動状態からの発光であると考えられる。アントラセンの三重項励起エネルギーは1.7 - 1.8 eVであることから、合成した化合物の一重項状態および三重項状態の電荷移動状態はアントラセンの局在三重項状態よりも高いエネルギーを有している。このモデル化合物の分子内三重項‐三重項エネルギー移動過程と逆項間交差過程の競合の可能性を過渡PL特性及びデバイス特性に基づいて評価を行った。過渡PL特性の温度特性において明確な熱活性化型の遅延蛍光は観測されなかった。一方、モデル化合物を発光材料に用いて有機LEDを作製しデバイス特性の評価を行った結果、最大外部EL量子効率およびPL量子収率から見積られた一重項励起子の利用効率は理論限界である25%を大幅に超える40 - 45%の結果が得られた。この結果は、EL過程においては三重項励起子が一重項励起子に一部アップコンバージョンされていることを意味する。今後は観測された三重項励起子から一重項励起子へのアップコンバージョンされる機構について明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最低励起一重項状態は電荷移動状態に帰属され、そのエネルギーに比べて、局在する励起三重項状態が低いエネルギーを有するモデル化合物を発光材料に用いた有機EL素子において、三重項励起子が一重項励起子に一部アップコンバージョンされていることが確認された。 また、電荷移動三重項状態から電子ドナー基や電子アクセプター基に局在する三重項状態への分子内三重項‐三重項エネルギー移動過程を調べるために導入した過渡吸収装置に関しても、過渡吸収測定と同時に発光を除去する手法を用いて遅い時間スケール(~ 100 ns以上)において0.1%以下の透過率変化が観測可能であることが確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
分子内三重項‐三重項エネルギー移動の支配因子を明らかにし、その制御方法を確立するために、本年度は以下の項目を検討する。 ① 導入した過渡吸収測定装置を用いて溶液及び固体膜における過渡吸収測定を行い、電荷移動三重項状態から電子ドナー基や電子アクセプター基に局在する三重項状態への分子内三重項‐三重項エネルギー移動過程の直接観測を検討する。 ② EL過程において観測された三重項励起子から一重項励起子へのアップコンバージョン機構について明らかにするために、過渡EL特性を調べることによって三重項‐三重項消滅による遅延蛍光の可能性について検討を行う。 ③ 電流励起下における三重項励起子の生成・消滅過程を検討するために、電流励起下における有機LED素子の過渡吸収測定を行い、三重項励起子のダイナミクスを調べる。 ④ 上記の研究で得られた成果に基づき三重項励起子から一重項励起子へのアップコンバージョン機構を有する新規青色発光材料の設計・合成を行う。
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