2016 Fiscal Year Annual Research Report
微細組織から最先端材料の力学挙動を予測する実践的CAEシステムの創成
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16H06059
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
青柳 吉輝 東北大学, 工学研究科, 准教授 (70433737)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 力学異方性 / 2軸引張り試験 / 結晶塑性論 / マルチスケールモデリング / SUS316L微細粒鋼 / CAEシステム / 降伏関数 / ポリ乳酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
強圧延加工された板厚0.06 mmのSUS316L微細粒鋼について,EBSDによる結晶組織観察を行った.次に,解析に用いる材料パラメータを同定するため板材のRDおよびTDと平行になるように試験片を切り出して単軸引張り試験を行った.また,本研究課題で導入した2軸引張り試験機を用いて2軸引張り試験を実施し,SUS316L微細粒鋼の等塑性仕事面を作成した.単軸引張り試験の結果,RDおよびTDで引張り強度までのひずみが異なることや降伏付近で応力値が異なることがわかった.これにより,RDおよびTDで力学異方性が発現していることが確認された.また,2軸引張り試験の結果から,RD,TD以外でも力学異方性が発現していることが確認された.一方,高分子材料に関してはポリ乳酸の球晶組織観察,力学試験および数値解析から,球晶組織などの微細組織がひずみ速度依存性などの巨視的力学特性に与える影響についての検討を行った. さらに,EBSDを用いて測定した微細粒鋼の結晶組織情報を解析モデルへ適用し,RDの単軸引張り試験から得られた応力ひずみ線図とのカーブフィッティングによって材料パラメータの同定を行った.このようにして強圧延加工による集合組織を模擬した解析モデルに対して,2軸引張り試験を想定した結晶塑性論に基づく有限要素解析を行った.得られた結果を2軸引張り試験結果と比較し,集合組織による力学異方性の評価および解析モデルの妥当性の検証を行った.その際,降伏関数は高次の関数であるYld2000-2dを用い,遺伝的アルゴリズムを用いることによって異方性パラメータの最適値を同定した.2軸引張り試験を想定した数値解析により,力学異方性を十分に表現するには解析モデルの結晶粒数が100程度必要であることが確認された.また,数値解析結果と実験結果の比較により,実験と解析とで等塑性仕事面の形状は概ね良い一致を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた超微細結晶粒アルミニウムではなく入手が容易なSUS316L微細粒鋼を供試材とすることによって,予定していたよりも多くの実験結果を得ることができた.いずれの材料もFCC金属であるため,結晶塑性モデルにおけるこれらの材料の差異はなく,順調に数値解析を行うことができた.得られた実験結果と数値解析の結果は良い一致を示し,計画以上の成果が得られたといえる.また,当初計画していたポリプロピレンに関する2軸引張り試験を行うには至らなかったが,ポリプロピレンと同様の結晶組織を有するポリ乳酸の球晶組織観察,力学試験および数値解析から,球晶組織などの微細組織がひずみ速度依存性などの巨視的力学特性に与える影響についての検討を行ったため,次年度はこれらの材料の2軸引張り試験片を作製し即座に2軸引張り試験を行うことができる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に得られた結果を比較し,数値解析の結果が実験結果の等塑性仕事面と差が見られた箇所に関して,現状のモデルでは考慮していない結晶粒や球晶の境界の詳細な影響について実験結果と比較しつつ数理モデルを修正する.SUS316L微細粒鋼の粒径,転位密度などを焼鈍処理によって変化させ,平成28年度と同様の内容を行うことによって,降伏応力や異方性パラメータなどの巨視的な等塑性仕事面の発展に与える影響因子を特定する.得られた検討結果は,マルチスケール結晶塑性モデルへとフィードバックされ,実験結果をよく再現する数理モデルを構築する. 一方,プレス成型による高分子材料板の等塑性仕事面は等方性を示すことが予想されるが,実際の構造部品の生産に使用される射出成型を用いると,高分子材料の力学特性は異方性を示すことが知られている.そこで平成29年度は,射出成型によって創製されたポリプロピレン平板およびポリ乳酸平板に対して平成28年度と同様に等塑性仕事面を求める.結晶性高分子の場合には,実験観察で測定した球晶サイズや結晶化度の情報を高分子塑性モデルに反映させ,2軸引張り試験を想定した数値解析を行う.本解析で得られる様々な材料組織および負荷条件での数値解析の結果から,数値パラメータと材料の微視組織の影響因子を関連づけて関数化し,平成28年度と同様に解析結果と実験結果を比較して球晶サイズ,結晶化度や密度が等塑性仕事面の発展に対する影響因子を特定する.
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Research Products
(12 results)