2016 Fiscal Year Annual Research Report
帯電系のための新規分子動力学法の開発と有機熱電変換材料への応用
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16H06071
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
高橋 和義 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センター, 研究員 (60645208)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高分子電解質 / 物理化学 / 計算化学 / 分子動力学 / 高分子物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高分子電解質溶液系(帯電系)の分子動力学(MD: Molecular Dynamics)法を新たに開発し、これを用いて高分子電解質の溶液構造に及ぼすイオン拡散・凝縮・伝導などの効果を詳細に調べることで、近年注目される熱電変換材料の知的基盤の構築を目指す。 平成28年度は帯電系のMD法として期待されるLIPS(Linear-combination-based Isotropic Periodic Sum)法の高速化・高精度化に関して主にふたつのアプローチを試みた。ひとつはLIPS法に高速フーリエ変換(FFT)を組み込んだLIPS/FFT法の開発である。この手法を典型的な全原子分子系(すべての原子を取り扱う系)である水バルク系に適用し、その計算速度・精度を検証した。これにより、全原子MDにおいて十分な高速化・高精度化が達成される目処が立った。もうひとつはLIPS法と粗視化モデル(原子団を粗視化粒子に置き換えることで計算量を削減するモデル)の併用である。この手法を粗視化双性イオン膜系(リン脂質系)に適用し、その計算速度・精度を検証した。これにより、粗視化MDにおいて十分な高速化・高精度化が達成されることを確認した。 高分子電解質溶液系のような巨大分子系の長時間挙動を定量的に追跡するためには、全原子および粗視化MDとの合理的な連携が不可欠であるが、その接続法は確立されていない。そこで、基本的な高分子であるポリエチレンの溶融体について、両者を用いたマルチスケール接続を試みた。接続に必要な最小限のパラメータを特定し、粗視化MDの時間・空間スケールを合理的に定量化することができた。また、両者の乖離が発生する特徴的な時間・空間スケールを特定することができた。 以上の知見は、高分子電解質溶液系のMDを実行するための重要な手がかりとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LIPS/FFT法の開発、およびLIPS法と粗視化モデルの併用に一定の目処が立ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はLIPS/FFT法を広く一般に認知された高速なMD計算プログラムへと実装し、代表的な非帯電系および基本的な帯電系において計算速度・精度を既存手法と比較することにより、その有効性を明確に示す。同様に、LIPSと粗視化モデルとの併用についても検証を進める。次に、これらの手法とpH一定のMD法との組み合わせを検証する。また、巨大分子系の長時間挙動を定量的に追跡するために、全原子および粗視化MDのマルチスケール接続法を開発、検証する。
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Research Products
(4 results)