2017 Fiscal Year Annual Research Report
血中循環腫瘍細胞をターゲットとするリキッドバイオプシーで拓く高速癌診断システム
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16H06078
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中島 雄太 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (70574341)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 立体変形マイクロフィルタ / アプタマー / 血中循環腫瘍細胞 / 癌診断システム / リキッドバイオプシー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、血液中の循環腫瘍細胞(CTC)の捕捉をアシストするための立体変形マイクロフィルタを設計し、実際に製作した。本フィルタはマイクロ加工技術と精密電鋳技術により製作されるものであり、昨年度までに検討した製作のための条件を用いて予定通りに製作することができた。製作した立体変形マイクロフィルタの基本特性評価として、流体を導入した際のフィルタの変形量について実測した結果、流量に応じて変形量を調整できることを実証した。本フィルタに関しては、研究を進めていきながら常に結果をフィードバックすることによって状況に応じた最適設計指針を取得し、改善していく予定である。 一方、製作したフィルタにがん細胞に多量に発現していると言われている上皮細胞接着分子(EpCAM)と特異的に結合するEpCAMアプタマーを修飾し、癌細胞の捕捉実験を行った。比較実験として、EpCAMアプタマーの代わりにEpCAM抗体をフィルタに修飾したものや癌細胞の代わりに正常細胞を用いた実験も同時に実施した。CTCは赤血球や白血球などの血液細胞よりもサイズが大きく歪な形状をしているため、本フィルタを用いることによってCTCに特異的に発現するEpCAMとの特異的捕捉とサイズや形状を指標とした捕捉を同時に行うことができる。実験の結果、構築したフィルタを用いることによって、正常細胞に比べて効果的に癌細胞を捕捉することに成功した。また、EpCAMアプタマーを修飾したフィルタの方がEpCAM抗体を修飾したフィルタよりも10倍以上も効果的に癌細胞を捕捉できることがわかった。一方で、フィルタの部位によって捕捉数が大きく異なることがわかった。これは、流体がフィルタを通過する際の流体力の分布やフィルタの変形量などに依存するものだと考えられる。今後は数値シミュレーションによる検証と実験の結果を総合的に検証し、フィルタの改善を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、癌細胞の捕捉をアシストするための立体変形マイクロフィルタを設計し実際にフィルタの製作が完了した。製作したフィルタの基本特性評価に加え、選定したEpCAMアプタマーや非特異的吸着を防ぐためのSAM膜を修飾し、癌細胞の捕捉実験やフィルタ改善のための検証も進んでおり、次年度への課題も明らかになった。上記の通り計画を着実に実行していることから、今年度の達成度はおおむね順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、製作したフィルタを用いた癌細胞の捕捉実験を行う。具体的には、癌細胞のみを用いた実験と正常細胞のみを用いた実験、癌細胞と正常細胞を様々な比率で混合したものを用いる実験を行い、それぞれで癌細胞の捕捉率や非癌細胞の非特異吸着率、フィルタに導入する流速と捕捉される癌細胞の量などについて評価・検証する。また、数値解析ソフトを用いて流量とフィルタの変形量の関係を明らかにし、実験と理論の両面からの検証結果を基にして、さらに効率的に癌細胞を捕捉することができるフィルタを新たに設計・製作する。具体的には、フィルタデザインの再設計、フィルタ構成材料の選定、フィルタの剛性の設計など、細部にわたって検討する予定である。 一方で、シグナル増幅機構に関する基礎的な検討を開始する。ここでは、DNAサーキットの仕組みを適用する。具体的には、トリガーDNAとEpCAMアプタマーが部分的に二本鎖を形成した複合体を設計・調整し、このアプタマーを癌細胞の培養液中に導入する。このアプタマーが癌細胞(EpCAM)と結合することを蛍光試薬等を用いて評価する。また、このアプタマーから増幅機構のトリガーとなる一本鎖DNAが目的通りに放出されることを実証し、目的のシグナル増幅機構が実現可能であることを示す。
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Research Products
(4 results)