2017 Fiscal Year Annual Research Report
半導体三次元カイラルフォトニック結晶共振器による円偏光を介した単一スピン制御
Project/Area Number |
16H06085
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
高橋 駿 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 助教 (60731768)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電子デバイス・機器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、三次元カイラルフォトニック結晶共振器を利用して、カイラル構造による円偏光制御と円偏光による固体中のスピン制御を融合することにより、円偏光を介して幾何学的な構造カイラリティの左巻き右巻きによって単一スピンの上向き下向きを制御することを目的としている。2年目であった当該年度では、前年度から引き続いて、円偏光共振器のQ値を向上させる構造設計と単一量子ドットの結晶成長を行うほか、前年度に作製に成功した円偏光共振器に単一量子ドットを導入することを目指した。ただし、前年度において、当初の予想に反して、光のスピン制御につながるトポロジカルエッジ状態の存在が明らかになった。スピン制御を目的とした本研究の遂行上、このエッジ状態の本質を見極めることが不可欠であったため、当初計画を変更して、その理論構築を追加で実施した。 まず、前年度から継続している円偏光共振器の構造設計については、有限差分時間領域法による数値計算によって、これまでに本研究で得られていたQ値6000(らせん周期数12)に対して、構造変調によって新たに同じらせん周期数でQ値25000が得られた。また、単一量子ドットの結晶成長も行い、強い発光を示す低密度量子ドット基板を得た。この他に、本研究と関連する円偏光発光素子に関する学術論文を執筆・出版し、国内学会での招待講演で報告したほか、奨励賞の受賞にもつながった。さらに、本研究には欠かせない共振器Q値の向上に関する学術論文など計4編を執筆・出版した。 次に、当初計画を変更して取り組んだトポロジカルエッジ状態についても、国内の研究者との共同研究を行った結果、4件の国内学会、4件の国際学会で発表につながったほか、論文も準備中である。 しかし、当初計画を変更したことや、研究代表者が研究機関を異動し、助教ながら独立した研究室の運営を始めたことで、当初計画に対してはやや遅れている状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度から継続している円偏光共振器の構造設計については、有限差分時間領域法による数値計算によって、これまでに本研究で得られていたQ値6000(らせん周期数12)に対して、構造変調によって新たに同じらせん周期数でQ値25000が得られた。また、単一量子ドットの結晶成長も行い、強い発光を示す低密度量子ドット基板を得た。この他に、本研究と関連する円偏光発光素子に関する学術論文を執筆・出版し、国内学会での招待講演で報告したほか、奨励賞の受賞にもつながった。さらに、本研究には欠かせない共振器Q値の向上に関する学術論文を執筆・出版した。 また、当初計画を変更して取り組んだトポロジカルエッジ状態についても、国内の研究者との共同研究を行った結果、4件の国内学会、4件の国際学会で発表につながったほか、論文も準備中である。 このように、当該年度は成果が多かったものの、当初計画を変更したことや、研究代表者が研究機関を異動し、助教ながら独立した研究室の運営を始めたことで、当初計画に対してはやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度にQ値の改善に成功した円偏光共振器を、結晶成長に成功した量子ドット基板を用いて作製し、低温顕微フォトルミネッセンス測定を行う。単一の量子ドット発光波長と円偏光共振器モードを合致させたときに、共振器量子電気力学におけるパーセル効果によって、発光強度や発光寿命が左回り/右回り円偏光で異なることを観測する。以上の昨年度取り組むべき課題に加えて、当初の計画どおり、同様の試料に対して外部磁場を印加して量子ドット内のスピン縮退を解き、円偏光とスピンの選択則が満たされる場合のみ、パーセル効果により発光が増強されることを観測する。当初の計画における2年分を次年度で行うことは、研究代表者ひとりでは困難であるが、本年度より配属された学生とともに研究を進めることで、遅れを取り戻したい。
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