2018 Fiscal Year Annual Research Report
半導体三次元カイラルフォトニック結晶共振器による円偏光を介した単一スピン制御
Project/Area Number |
16H06085
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
高橋 駿 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 助教 (60731768)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電子デバイス・機器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、三次元カイラルフォトニック結晶共振器を利用して、カイラル構造による円偏光制御と円偏光による固体中のスピン制御を融合することにより、円偏光を介して幾何学的な構造カイラリティの左巻き右巻きによって単一スピンの上向き下向きを制御することを目的としている。3年目であった当該年度では、初年度から継続して、円偏光共振器のQ値を向上させる構造設計と単一量子ドットの結晶成長を行うほか、すでに作製に成功している円偏光共振器に単一量子ドットを導入し、共振器量子電気力学におけるパーセル効果の観測を目指した。 異動後に新たに立ち上げた、低温での顕微フォトルミネッセンス測定系において、三次元カイラルフォトニック結晶を用いた円偏光共振器を実現し、InAs自己形成量子ドットから左回り円偏光に偏極した発光ピークを得ることに成功した。この成果は、当該年度に国内学会で2件発表したほか、次年度の国際学会でも発表予定である。また、元号が変わった最近になって、同様の円偏光共振器ピークに対して温度変化を観測したところ、ある温度においてピーク強度の著しい増加が観測された。これは、温度変化によって特定の量子ドットの発光波長と円偏光共振器モードの波長とが一致したことで起こったパーセル効果を示唆する結果であり、共振器に閉じ込められた円偏光光子と量子ドット内で対応するスピンをもつ電子とが弱結合状態にあると考えられる。 一方で、カイラルフォトニック結晶の構造最適化設計に関しては、蘭国の教授と国際共同研究を行い、国際学会にて発表したほか、論文準備中である。また、初年度に当初計画を変更して取り組んだトポロジカルエッジ状態についての研究を論文として出版したほか、三次元フォトニック結晶作製技術の発展による光微小素子の集積化についても論文として出版した。以上の研究成果について、2件の国内学会、5件の国際学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度から継続して行っている三次元カイラルフォトニック結晶の構造最適化設計に関して、当該年度より蘭国の教授と国際共同研究を開始し、国際学会にて発表した。現在、論文準備中である。 一方で、昨年度までの構造設計に基づいて作製したカイラルフォトニック結晶については、異動後に新たに立ち上げた、低温での顕微フォトルミネッセンス測定系において、本研究で重要な役割を果たす円偏光共振器を実現した。すなわち、共振器構造を含む左巻きのカイラルフォトニック結晶において、内部に埋め込んだInAs自己形成量子ドットから左回り円偏光に偏極した発光ピークを観測することに成功した。また、元号が変わった最近になって、同様の円偏光共振器ピークに対して温度変化を観測したところ、ある温度においてピーク強度の著しい増加が観測された。これは、温度変化によって特定の量子ドットの発光波長と円偏光共振器モードの波長とが一致したことで起こったパーセル効果を示唆する結果であり、共振器に閉じ込められた円偏光光子と量子ドット内で対応するスピンをもつ電子とが弱結合状態にあると考えられる。以上の成果から、本研究は当初の研究計画に対しておおむね順調に進展している。 前年度は、助教ながら独立した研究室の運営を始めたこともあり、研究の進捗に遅れがあったが、当該年度でこれを取り戻すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はまず、得られた円偏光共振器ピークに関して量子ドットの単一性を確認する。単一の量子ドットから単一の光子が放出されることを観測するために、HBT(Hanbury Brown and Twiss)光学実験系を構築し、光子の二次相関におけるアンチバンチングを測定することも検討する。また、強磁場印可装置を保有する研究者と協力して、円偏光共振器に外部磁場を印加して量子ドット内のスピン縮退を解き、円偏光とスピンの選択則が満たされる場合のみ、パーセル効果により発光が増強されることを観測する。 以上と並行して、蘭国の教授との国際共同研究を推進し、カイラルフォトニック結晶円偏光共振器の構造最適化設計を行い、共振器Q値の向上に努める。その後、当初の計画どおり、高いQ値を有する円偏光共振器に閉じ込められた円偏光光子と、それに対応するスピンをもった電子との強結合状態の実現を目指す。
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