2018 Fiscal Year Annual Research Report
単一界面欠陥のチャージポンピング過程を用いた2電子スピン相関の室温観測
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16H06087
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
堀 匡寛 静岡大学, 電子工学研究所, 講師 (50643269)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | シリコンMOSFET / 界面欠陥 / チャージポンピング法 / 電子スピン共鳴法 / EDMR法 / ダングリングボンド / 再結合過程 / ドーパント |
Outline of Annual Research Achievements |
MOSトランジスタのゲートにパルス電圧を与えることで電子正孔再結合過程を誘導する手法は、シリコン/シリコン酸化膜の界面欠陥を評価する「チャージポンピング法」として広く用いられている。しかしながら、同手法で検出される欠陥の起源(種類)はこれまで明らかではなかった。 このため本研究では、チャージポンピング法と電子スピン共鳴法とを組み合わせたチャージポンピングEDMR(Electrically detected magnetic resonance)法を立ち上げてきた。平成30年度は、低温下のチャージポンピングEDMR測定を行い、主に以下の3点の成果を得た。 1.検出したピークの起源を同定するためにより詳細な解析を行った。具体的には、電子スピン共鳴装置のキャビティ内において、印加磁場に対してMOSトランジスタの角度を変えてチャージポンピングEDMR測定を行った。そして、ピークのg値と回転角度の依存性を取得し、欠陥の起源を同定した。この結果、界面欠陥(Pbセンター)と酸化膜中欠陥(E'センター)がチャージポンピング過程に寄与していることを確認した。 2.同手法のメカニズムについてモデルの提案を行った。具体的には、ピークの強度と測定温度の依存性を取得し解析した。その結果、同手法におけるスピンに依存したプロセスは1つの欠陥サイトに対して2つ目の電子の捕獲過程に由来していることがわかった。 3.同手法を用いてMOSトランジスタ中のヒ素(As)原子に由来するピークを検出した。このことは、同手法が界面欠陥だけでなくドーパントの検出にも適用可能であることを示しており、今後詳細な解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、低温測定系を立ち上げた。そして、チャージポンピング過程下でのEDMR測定を実施した。データの取得や解析も順調に進み、これらの成果を論文にまとめた(現在審査中)。 また、同手法を用いることで界面欠陥だけでなく、ドーパント原子の検出も可能であることが分かった。このことは、ドーパント原子を利用した電荷スピン転送技術などへの展開も期待されるため、引き続き詳細な測定を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
チャージポンピングEDMR法を用いて、界面欠陥だけでなくドーパント原子の検出も可能であることが明らかとなったため、今後はチャージポンピングにおけるパルス電圧の条件をパラメータとして詳細なデータを取得し、解析を行う。 また、引き続き、高感度測定系の確立に向けて、測定装置の振動由来の雑音やMOSトランジスタ由来の雑音を詳細に調査し、測定系の雑音を抑制する。
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Research Products
(11 results)