2016 Fiscal Year Annual Research Report
半導体表面・界面におけるスピン輸送エンジニアリング
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16H06089
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安藤 裕一郎 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50618361)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | スピントロニクス / 半導体 / スピン輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は(B)の内容である二次元電子ガス中のスピン輸送物性の解明として,GaAs逆HEMT構造中およびLaAlO3/SrTiO3中のスピン輸送実験を行った.GaAs逆HEMT構造では強磁性体Ni80Fe20をスピン注入源とし,スピンポンピング法によるスピン輸送を行った.輸送されたスピン流はPt電極による逆スピンホール効果により,電圧信号として検出した.その結果,室温におけるスピン輸送信号の検出に成功した.またイオン液体を用いてゲートを印加し,スピン輸送信号の変調を試みた.電気伝導特性には明瞭な変調が確認できたが,スピン流輸送特性に大きな変化は見られなかった.原因としては,二次元電子ガスのキャリアが十分に変調されている訳ではなく,それ以外の部分のキャリアが誘起された可能性がある.今後,ゲート電極の作製手法および二次元電子ガスの構造の改善を行う.同様の実験をLaAlO3/SrTiO3の2次元電子ガスでも行った.この2次元電子ガスはd軌道電子で構成されているという特長を有する.この素子でも室温におけるスピン輸送に成功した.特筆すべき点はスピン寿命が室温で数ナノ秒と極めて長い点である.今後,このように長いスピン寿命が得られた原因について調査していく必要がある.(C)のトポロジカル絶縁体については,新しくビスマスアンチモンに着目し研究を行った.当該試料はアンチモンの組成により,半金属の非トポロジカル相から半導体トポロジカル相まで大きく変調出来る利点がある.これらの試料のスピン流-電流変換を調査したところ,アンチモン組成が高い方が変換効率が高いことが分かった.しかし,これはトポロジカル相との相関はなく,運動量緩和に支配されていることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(A) のシリコン,ゲルマニウムにおける反転層の実験については,ゲート酸化膜を作製する原子層堆積装置が2017年度の3月末に納入されたため,ほとんど実験を行うことができなかった.しかし,(B)の半導体2次元層におけるスピン輸送については当初の予定以上の成果が出ている.また(C)のトポロジカル絶縁体についても,概ね順調に進んでいる.以上を鑑み,平均すると概ね順調な進展といえる.
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度はゲート絶縁膜を作製可能な原子層堆積装置を早期に立ち上げ,全ての実験において,ゲート機能の研究に注力する.特に(A)シリコン,ゲルマニウムの反転層についてはその工学的重要性も高いことから,複数のスピン流生成方法を駆使して,系統的な検討を行っていく予定である.
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Research Products
(9 results)