2016 Fiscal Year Annual Research Report
溶出評価加速連成システムによる放射性廃棄物セメント固化処理体の管理・安全評価
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16H06095
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
橋本 勝文 京都大学, 工学研究科, 特定講師 (30609748)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 放射性廃棄物 / セメント固化処理 / 溶出 / 加速試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
セメント固化体中の放射性核種イオンの挙動を明らかにすることを目的として溶解変質試験を行った。試験後のセメントペースト粉末試料に対して、熱分析によるセメント水和物の分析を行い、この結果から放射性核種イオンがセメント水和生成物の変質に対して与える影響に関する考察を行った。また、同様の試料に対して浸漬試験を行い、放射性核種イオンがCaイオンの溶出挙動に与える影響の考察を行った。さらに、複数イオンの移動を考慮したCaイオンの溶出予測手法を構築し、実験結果と比較することでこの手法の精度および有用性を評価した。以上に加え、長期浸せき試験および溶出評価加速連成システムの稼働を平成28年度内の目的に挙げていた。 試験に供した試料は、OPC(普通ポルトランドセメント)に対してBFS(高炉スラグ微粉末)を50%あるいは90%置換した粉体を用意しW/Bが0.37となるようにイオン交換水を用いてペースト供試体を作製した.また、この試料を作成する際にCsおよびSr濃度が0.0あるいは3.0wt%となるようにCsCl、CsNO3、SrCl、あるいはSr(NO3)2を混練した。 本研究により、これまでに得られた結論は、1)CaイオンとSrイオンの交換によりC-S-H相の安定性が向上する可能性があること、また、Csイオンは水和生成相に収着しにくいこと、2)一次元差分法を用いたセメント固化処理体からのCa溶出予測手法を構築できた。さらに、本研究で構築した予測手法は0.5年後のCaイオンの溶出挙動を良好に再現できること、本研究で構築した予測手法によると、100年までの間に細孔溶液中のCsおよびSrイオンがほぼ全量が溶出することがわかった。これに加えて、5)溶出評価加速連成システムにおいて、試験中の外部溶液における濃度勾配を調整するための水溶液循環システムを完成させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射性廃棄物セメント固化処理模擬供試体の作製および初期物性を評価して,長期浸せき試験(最大二年間)および溶出評価加速連成システムの稼働実験を開始することを目的として平成28年度の研究計画を遂行してきた。このとき,供試体物性,加速駆動力,周辺外部溶液環境を設定条件を検討するため,本研究を遂行する上での具体的な工夫(効果的に研究を進める上でのアイディア、効率的に研究を進めるための研究協力者からの支援等)として,本研究計画では実施しきれない数十年~数百年以上の実際の溶出挙動については,別途構築する数値解析的手法により得られる結果を用いることにより,限られた研究期間の中で最大の成果を得る,ということを合わせて実施できている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においては、試験A】実際の拡散現象と【試験B】移流(圧力)・電気泳動現象,および【試験C】AとB組合せによる現象の共通点と相違点を(1)外部水溶液環境への溶出量ならびに,(2)溶出および地下水成分の浸入に伴う水和生成相の溶解反応および二次鉱物の生成反応,(3)物理的特性(強度や空隙構造)の変化について明らかとする。以上より,溶出評価加速連成システム(試験方法)の妥当性を示し,本システムによる周辺環境への拡散予測結果に基づいて,放射性廃棄物処理プロセスの管理・安全評価手法の一つとして提案する。 溶出評価加速連成システムにおける溶出駆動力が供試体からの物理-化学的変質に及ぼす影響を明らかとし,長期浸せき試験による実際の現象と比較することにより,溶出評価加速連成システムの妥当性とセメント固化処理プロセスの管理・安全評価手法としての適用性を明らかとする。 特に、溶出加速駆動力が各イオンの溶出挙動に及ぼす影響を明らかとする。また,加速により得られる溶出挙動と水和生成相の溶解反応および二次鉱物の生成反応による細孔構造と強度等の物理特性に関する物理-化学的変質の相互作用を把握する。このとき,上記試験Aによる浸せき期間と加速期間を適切に設定することで現象の差異を理解できると考えている。また、固化処理体の物理化学的安定性については,水銀圧入法および窒素吸着法による細孔構造の分析,ならびに粉末X線回折,蛍光X線分析および示差熱分析等による化学分析による物性評価を供試体の物理-化学的変質評価の基幹項目とする。 最終的には、実際の溶出期間と加速期間の関係から,溶出評価加速連成システムにおける加速換算手法を構築する。すなわち,セメント固化処理体の物理化学的安定性評価および周辺環境への拡散予測を行うための溶出加速のシステム条件設定を明示する。
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