2018 Fiscal Year Annual Research Report
木質高層建物を対象とした制振技術開発と制振設計法の提案
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16H06107
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
松田 和浩 名城大学, 理工学部, 准教授 (80567397)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 木質高層建物 / ダンパー / CLT / 時刻歴応答解析 / 等価線形化手法 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本では戦後に植樹されたスギを主とする樹木が伐採時期を迎え、木材使用量を増やす必要性が生じており、CLTによる木質高層建物への需要が世界的に高まっている。しかしながら、CLT木造はRC造や鉄骨造と比べて宿命的にエネルギー吸収性能が小さいという重大な問題が明らかになっている。その耐震性向上に向けて、建物に剛性・減衰を付加する制振技術(ダンパー)は極めて有用と考えられる。本研究では、そのような背景のもと、高層建物用の高性能なCLT制振架構を開発し、それを用いるための制振設計法を提案することを目的としている。 3年目ではCLT制振架構および一般的なCLT耐震架構のフレームモデル構築に向けて、CLT壁柱単体の強制変形実験を行った。様々なパラメータを設けて多くの実験を行い、各試験体の力学挙動を把握した。また、柱脚支持部のM-θ関係の包絡線を評価する手法を提案し、その評価法を応用することで、当該部の挙動に各パラメータが及ぼす影響について考察した。 制振設計法の構築に向けた解析検討としては、複数の木質系耐力要素が用いられる建物を想定して、粘弾性ダンパーを付加することで各層の最大変形を目標値以下にするという応答制御の手法を提案し、その精度を検証して有効性を確認した。検討の際は、最初に一質点で周期、減衰定数、耐力要素の復元力特性、地震動などをパラメータにした1万を超えるケーススタディを行った後、多層建物を想定した多質点系で500ケース以上の検討をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
自己点検による評価では「(3)やや遅れている。」と判断する。以下にその理由について述べる。 研究計画書では3年目にCLT制振架構の振動台実験を予定していたが、本研究課題で重要な位置づけとなるCLT制振架構および一般的なCLT耐震架構のフレームモデル構築に向けて、振動台実験の代わりにCLT壁柱単体の強制変形実験を多数行うよう計画を変更した。また、その方針変更のために、実験結果の分析期間が予定より延び、研究費の繰越申請も行った。 申請書の予定から実験計画が変更になったものの、代わりに行った実験により、CLT壁柱の各部力学モデルを作成するなど、重要な成果が多く得られている。また、その研究成果は日本建築学会の大会学術講演や、東海支部の研究集会、国際シンポジウムなどで発表しており、日本建築学会の構造系論文集へと投稿の準備も進めており、達成度としては問題ない範囲と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策を以下にまとめる。 ①十字形、T字形のCLT壁柱-CLT梁接合部を対象とした強制変形実験を行い、CLT制振架構および一般的なCLT耐震架構のフレームモデルを構築する。 ②複雑なダンパーモデルを作成すること無しに、木質制振建物の時刻歴応答解析を行う手法を提案し、その精度を詳細に検証する。 ③これまでに得られた研究成果をまとめ、ジャーナル論文に投稿する。
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