2016 Fiscal Year Annual Research Report
中高層自然換気建物の換気設計指針の提案と設計段階における自然換気量の簡易予測法
Project/Area Number |
16H06110
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
小林 知広 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 講師 (90580952)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 自然換気設計 / 風洞実験 / 中高層オフィスビル |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度には、自然換気設計を導入した実物件を対象として実際の市街地に立地する建物の縮小模型を再現し、市街地における現実的な建物の風圧係数を取得して整備した。本件は交付申請時の実建物の風圧係数分布の実例を集めたデータベースを整備する研究計画の一環として実施したものであり、予定通り遂行することができた。また、実在する市街地だけでなく、市街地オフィスの汎用的な風圧係数データベース構築を目指して、単純な矩形建物を周辺に設置した状況でペントハウス付きの自然換気建物模型を3つの建物高さ条件で設置してそれぞれ16風向での風圧係数データを整備した。これにより将来的に設計時の換気量簡易予測のための境界条件データを整備したことになるが、建ぺい率条件などは固定の1条件で実施したため今後の研究計画でデータベースを充実させることを目指す。 また、当該年度には取得した対象建物の風圧係数を用いて換気回路網計算を行うとともに、前述の汎用風圧係数データベースの値を境界条件に用いた際の換気回路網計算も行い、両者の自然換気量計算結果を比較することで設計段階の換気量簡易予測時に風圧係数がどの程度センシティブに影響を及ぼすかを明らかにした。結果、汎用的なデータベースの風圧係数値を用いたとしても、対象とする中高層オフィスビルの換気システムがシャフト型であれば大きな影響を及ぼさないことが示された。今後の課題としては異なる自然換気システムとして、通風型や通風/シャフト併用型でも同様の感度解析を行うことと、前述の汎用データベースの充実を行うことが求められ、最終的にはこれらに基づいて、換気量の目標値を設定することでシャフト面積や自然換気口面積の指針値を逆算することができる計算法を換気設計指針として提示ことを目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標として掲げていた実在の市街地における実在自然換気建物の風圧係数分布を、実務設計者の協力のもと取得することができ達成できた。可能であれば当該風圧係数取得の対象とする建物は2建物を目指したが、研究の最終目標を考慮した上で実建物は1つとして、他方の代替として汎用的な市街地オフィスの風圧係数データベース構築を整備がより重要との判断でこれを整備することができ、さらに申請時にはH29年度に予定していた換気回路網計算も実建物と汎用データベースの両者の風圧係数を用いて行うことができたため、若干の計画修正はあったが目標としていた進捗状況は十分に達成することができたと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
実績概要でも触れた通り、まずは市街地中高層オフィスの汎用風圧係数データベースのさらなる充実を目指す。このために矩形周辺建物模型の建ぺい率と対象オフィス模型の高さをパラメトリックに変更した風洞実験による風圧係数取得が実施する所存である。さらにH28年度には1建物で終わった実物件の例を増やし、もう1件自然換気建物の実物件を取り扱いデータ事例を増やす。なお、当該建物の検討では、実建物内でトレーサーガス法による換気量測定も行うこととし、換気回路網計算の精度検証も実施する。研究の体系的な方針としては、H28年度にシャフト型のみとしていた検討範囲を広げ、通風/シャフト併用型の建物での検討をH29年度に実施することとし、自然換気タイプごとに設計時に目標の換気量を設定することで自然換気口面積やシャフト面積等の重要な設計パラメータの指針値を逆算することができる換気設計指針の策定を目指す。
|