2017 Fiscal Year Annual Research Report
多時点マルチレベルモデルに基づく室内温熱環境の虚弱予防効果の検証
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16H06111
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
安藤 真太朗 北九州市立大学, 国際環境工学部, 講師 (60610607)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 室内温熱環境 / 虚弱予防 / 筋力 / 生存分析 / 高齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度においては、前年度より継続して研究活動を行った。スケールに応じた概要を示す。 1、住宅スケール: 福岡県北九州市や高知県梼原町、山口県長門市を対象地として住環境と健康状態の調査を実施した。ここでは昨年度同様に、一般市民を対象としたベースライン調査ならびにフォローアップ調査を実施し、筋力の減退や認知傾向等の変化について追跡把握を行った。ここでは収集した横断面および縦断面データを基に、生活習慣(主に活動量)の変化や虚弱の程度を把握している。特に今年度においては、昨年度の成果を踏まえてマルチレベル分析を実施し、日々の室温の変化が握力に及ぼす短期的・長期的影響の定量把握を行った。その結果、寒冷な室温環境下に曝露された者は短期的な影響(日レベル)として顕著な握力低下が存在し、同様に、長期的な影響(個人・世帯レベル)としても握力低下があることが確認された。これらの結果を踏まえて、寒冷環境が生存へ及ぼす影響についても検証した。他の疫学研究の成果も関連付けて、対象地域の断熱性能を向上させた場合のシナリオ分析を実施したところ温暖な温熱環境形成によって握力低下を抑制し、結果的に対象地区の25年後死亡を10%弱抑制できる可能性が示唆された。 2、地域環境スケール:昨年度同様に地域による虚弱への影響についても検証した。北九州市内の高齢者を対象としたアンケート調査によって、居場所や買物行動の有無が虚弱の進展に影響を及ぼすことを確認した。これらの結果を踏まえて、地域内の外出行動や継続的な歩行に繋がる街路環境についても注目し、脳波計測を伴う被験者実験によって緑道による好影響を確認している。 尚、実験室スケールについては、昨年度の結果を踏まえ、実住宅を対象とした冬季の被験者実験の計画を行い、実験空間を確保するための関係づくりとプレ実験を行うことで次年度の研究活動に備えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、住環境整備による虚弱予防に資することを目的として、「多時点マルチレベルモデルに基づく室内温熱環境の虚弱予防 効果の検証」を達成すべき課題としている。ここでは、断面の調査ではなく日別や年別の繰り返し測定を行い、多時点のデータに基づく多変量解析を実施し、その機序を解明することが必要とされるが、平成29年度においては、前年度の研究成果をより確度の高いものとするために、①ベースラインデータの補完、②追跡調査の実施、③詳細分析の展開を達成した。特に、生存分析に基づくシナリオ検証は想定以上の成果が得られている。一方で、高齢者の被験者実験については、もう一度プレ実験を重ねて、次年度に仕切り直すこととなったが、これは元々想定以上の進捗であったため、結果的に当初の予定通りとなっている。
以上に基づき、おおむね順調に進展している、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度において実施した調査によって、前年度に立証した仮説をより高い確度にし、そしてその結果を応用したシナリオ分析までも達成した。今後は前年度より課題としてきた、①構造的な階層スケールを考慮したパス解析の展開、②蓄積したデータのフォローアップからのコホート分析等といった対策を講じる。以上の継続的進行と再考、また被験者実験によって多時点のデータに基づく多変量解析を達成していくと共に、成果を論文や学会発表を通じて普及させていくことを予定している。
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