2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H06112
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Research Institution | Tokuyama College of Technology |
Principal Investigator |
平栗 靖浩 徳山工業高等専門学校, 土木建築工学科, 准教授 (90457416)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ノイズマップ / 騒音評価 / 航空機騒音 / 飛行航路データ / 地理空間情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究では、国民の騒音被害を軽減し、健康に生活するための基盤づくりのため、我が国における騒音政策プライオリティを上げ、欧州に対する遅れを取り戻し、更に先進的な政策展開の実現を目指し、日本全国のノイズマップを作成し、空間分析を行うことで、騒音のリスクを定量的に明らかにし、その結果を国民に発信する。 そこで①ノイズマップ作成のための基盤的要素技術の開発、②ノイズマップの試算、③ノイズマップの効率的な精度検証手法の開発、④ノイズマップと地理空間オープンデータを用いた空間分析によるリスク評価、⑤情報公開のあり方、というノイズマップの作成から活用までの一連の用件について、本申請研究では主に航空機騒音を対象として総合的に研究する。 平成29年度の実績を研究目的の①~⑤の別に、以下のとおり示す。①ADS-B信号の受信・データベース構築システムを作成し、実際に長期間の航路を集積した。またその航路データベースから航空機騒音源の空間モデルを生成するシステムを開発した。②申請時の計画では平成29年度の後半よりノイズマップの試算に着手する予定であったが、達成できなかったため平成30年度に実施することとする。③iPhoneを用いた簡易騒音評価アプリを用いた精度検証用騒音レベルデータベースの蓄積を実施したが、検証用データベースとしては未だデータ数が十分ではない。④申請時の計画では平成29年度で居住者数推定手法が完成予定であったが、精度検証がまだ未着手であるため、引き続き開発を継続する。⑤欧州におけるノイズマップ公開状況を調査・ヒアリングし、「何故欧州では公開できるか」について調査した。その理由として、オーフス条約の存在が挙げられるなど、市民の環境情報へのアクセスに関する日欧間の顕著な差異が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究項目の①~⑤の別に、現在までの進捗状況を示す。なお、平成29年度研究実施期間中に在外研究を行ったため、進捗はやや遅れている。 ① これまでに航路データ収集システムを構築できたため、平成29年度は本システムを用いて長期間の航路データを蓄積した。対象地域は、福岡空港周辺地域と、ノイバイ空港(ベトナム・ハノイ)周辺地域とした。福岡ではおよそ5ヶ月におよぶ長期間のデータベースを蓄積し、ハノイでは2週間分のデータベースを蓄積した。本データベースから航空機騒音源の空間モデルを自動生成するアルゴリズムもあわせて開発した。 ② ①で作成した航空機騒音源の空間モデルを用いた広域騒音予測計算システムを開発する予定であったが、平成29年度は未着手となった。 ③ 簡易騒音評価アプリケーションソフトのデモ版は完成しているものの、未だ動作安定性等に課題が残っている。平成29年度に実施予定であった騒音レベルデータベースへの転送機能が未完成であるため、平成30年度の評価版の完成を目指す。また実際に本アプリを用いてデータ収集を行ったものの、データ数は十分ではない。 ④ 前年度に引き続き、居住者数推定手法の改良を行った。新たな地理空間オープンデータの活用を検討し、推定精度の向上を図ったが、正答率が80%を下回っており、更なる改良が必要である。 ⑤ 情報公開先進国といえる欧州において、ノイズマップの公開状況の調査、および現地の研究者および一般市民に対してヒアリングを実施した。EU諸国のほぼ全てでノイズマップがweb上で公開されていることが確認された。また「何故ノイズマップを公開できるのか」をヒアリングしたところ、オーフス条約の存在や、「税金で運営されている公的団体が所持している環境情報に納税者がアクセスできない理由が無い」など、情報アクセスに関して、市民の意識が日欧間で顕著に異なることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要に示した本申請研究の目的の①~⑤の別に、今後の研究の推進方策を示す。 ①基盤的要素技術の開発:航路データ収集システムにより集積したデータベースを分析したところ、ADS-B信号を発信していない離発着時の航路データが一部欠落していることが明らかとなった。そこで航空機地上騒音を含め、ADS-B信号の受信だけでは得られない情報の収集方法について検討する。 ②ノイズマップの試算:平成29年度に第一段階の試算を実施できなかったため、平成30年度に実施する。①で作成した航空機騒音源の空間モデルを用いた広域騒音予測計算システムを構築する。その後、構築した予測計算システムを用いて、国内空港周辺地域を対象に、ノイズマップの試算を行う。その際、簡便な精度検証として、国土交通省等が計算している第一種・第二種区域マップとの整合性について検討する。 ③精度検証手法:平成29年度までに開発したiPhoneを用いた簡易騒音評価アプリケーションソフトを用いて、精度検証用騒音レベルデータベースの蓄積を実施する。同時に、ノイズマップ試算対象である伊丹空港周辺で長期間の騒音レベルの計測を行う。 ④空間分析:居住者数推定手法の開発を継続する。これまで用いてきた地理空間オープンデータに加え、その他のデータも活用することで、推定精度の向上を図る。 ⑤情報公開:平成29年度までの調査結果をもとに、我が国でノイズマップを公開する際のwebサイトのベースデザインを設計する。
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