2017 Fiscal Year Annual Research Report
高水素配位錯イオンの創製とエネルギー関連機能の創出
Project/Area Number |
16H06119
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高木 成幸 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (50409455)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 水素 / 高水素配位錯イオン / 超伝導材料 / 水素貯蔵材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
遷移金属錯体水素化物の高水素密度化を妨げていた従来の錯イオン形成限界である「6族の壁」を克服し、3族から6族の遷移金属元素に9つ以上の水素が配位した高水素配位錯イオンを有する遷移金属錯体水素化物群を合成する。これらの水素化物は高密度に水素を貯蔵することに加え、超高圧印可により極めて高い温度で超伝導相に転移することが期待できる。
平成29年度は、前年度までに合成に成功した複数の遷移金属錯体水素化物のうち、特にモリブデンに9つの水素が配位した高水素配位錯イオンを含むものを主な研究対象とし、超高圧下における電子状態や電気伝導特性について理論・実験の両面から評価・解析を進めた。拡張した計算機リソースを利用した第一原理計算からは、常圧近傍にて約4 eVのバンドギャップをもつ前述の遷移金属錯体水素化物が、昇圧とともに2度の一次相転移を経て、およそ96万気圧にてバンドギャップの閉じた金属相へ転移するとの理論予測を得た。また、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いた超高圧下での電気抵抗測定では、約100万気圧にて、超伝導転移を示唆する電気抵抗減少を捉えることに成功した。その他、特異な配位構造を有する8配位錯イオンの立体化学、ならびに有限温度下におけるその動的挙動の解析や、レニウムなどの7族元素からなる9配位錯イオンを有する新たな遷移金属錯体水素化物の高温高圧合成などにおいても、今後の新たな研究展開を期待させる結果を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最重要課題の一つであった遷移金属錯体水素化物における超伝導実証に目処がついたことに加え、9配位以下の高水素配位錯イオンに関しても、これまで未解明であった立体化学や動的挙動に対する理解が進んだことなどを鑑み、計画がおおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、前年度までの再現実験を含め、引き続き合成試料における超伝導実証実験を進めるとともに、理論・実験の両面から超伝導の発現機構解明に取り組む。また、高水素配位錯体水素化物の形成・分解機構の解明を目的とした放射光X線その場観察実験を計画しており、熱力学的安定性や反応速度などの評価と合わせて、残された課題である水素貯蔵機能実証にも取り組む。形成機構に関して得られる知見を踏まえ、これまでアルカリ金属に限定していた陽イオン種としての研究対象を、マグネシウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属にも展開し、引き続き新たな高水素配位錯イオンの探索研究も進める。 以上の研究を鋭意進め、高水素配位錯イオンを含む高密度水素化物に関する基盤研究を完遂する。
|
Research Products
(17 results)