2017 Fiscal Year Annual Research Report
定常電場下で駆動する直流型ナノ・マイクロモーターおよびポンプの創出
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16H06125
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
山本 大吾 同志社大学, 理工学部, 助教 (90631911)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マイクロモーター / 自励振動 / 非平衡現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,モルフォロジーを制御した単成分の固体粒子を用いて,定常直流電場下で周期運動を示す極めてシンプルなマイクロ動力システムの構築を目指すものである.本年度は,前年度新たに見出したコイル状粒子の長軸周りの回転運動(Corkscrew Rotation)に関して,種々の実験条件が運動に与える影響を詳細に検討した.その結果,形状はほぼ同一な螺旋状粒子であるにもかかわらず,粒子種(金属or有機物)によって回転方向が異なることがわかった.さらに,粒子周りの対流の可視化およびラプラス方程式を用いた二次元シミュレーションによって電場解析をおこなった.これによれば,電極間に粒子を配置した際,粒子の電気特性によって,電場の歪み形状が異なることで粒子周りの対流が変化する.この粒子が誘起した特徴的な対流の向きによって粒子の回転運動の方向が決定すると考えられる. その他,コイル状粒子以外でも粒子形状に応じて様々な周期運動モード(自転・公転・振動運動など)を発現することを見出しているが,運動モードの分岐が発現するメカニズムの解明のために,ピコアンペアレベルの電流値の変化を検出できる装置を構築し,粒子の周期運動が発現する際,電極間の電流値がピコアンペアレベルの極微小な振幅をもって同位相で振動することを見いだした.これらの結果は,新規な効率的ミクロ動力供給システムを創生する上で,非常に重要な知見であると考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
革新的なマイクロデバイス技術の実現に向けて,新たな動作原理に基づく単純なマイクロ動力供給システムを構築・提案することができ,本研究課題の初報として論文発表をすることができた(D. Yamamoto, et al., Chem. Lett. 2017).さらに,初報の実験的検討を基にして,特徴的な粒子を用いることで新たな運動特性を付与し,運動方向および運動速度の制御に成功している.この結果に関しては,第二報として論文を投稿中である.現在は,動力源としての応用が見込める高性能なマイクロモーターやポンプのプロトタイプを作製することを試みており,本研究課題申請時の研究計画に示した通りの進度で,おおむね予定通りに進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験的・理論的検討を基に,マイクロ空間・流路内において,粒子形状および電場を厳密に制御したマイクロモーターやポンプのプロトタイプを作製する.今現在,マイクロモーターシステムとしては,体内のナノモーターを模倣したミクロ物質を運搬するシステムを考えている. また,システムのスケールダウンを行い,ナノメートルサイズの粒子を用いた自己運動系を作製する.現段階では,マイクロ粒子の周期運動を取り出すのに100 Vを超える高電圧を印加する必要があるが,スケールダウンに伴って電極間距離を短くすると,電場の強さを維持しつつ印加電圧を下げることが可能となる.それにより,乾電池(数V)程度の微弱な直流電圧で安定な運動を取り出すことを目指す.粒子が小さくなると光学顕微鏡での観察が困難となるが,その場合には蛍光性の粒子を用いて運動を観察する.それでも運動が見られない場合には,少なくとも一次元方向にナノメートルオーダーの次元を持つ粒子を用いて検討を行い,マイクロからナノへの動力技術の橋渡しを行いたい.
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Research Products
(5 results)