2017 Fiscal Year Annual Research Report
窒化炭素系半導体と金属錯体を融合した二酸化炭素固定化光触媒の創出
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16H06130
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
前田 和彦 東京工業大学, 理学院, 准教授 (40549234)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 光触媒 / 金属錯体 / 二酸化炭素固定化 / 半導体 / 人工光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に見出したCO選択生成を可能とするRu(II)-Re(I)二核錯体/窒化炭素光触媒の高活性化を試みた。窒化炭素の表面をルチル型TiO2ナノ粒子で修飾し、そこにRu(II)-Re(I)二核錯体を吸着すると、同量の錯体を含むTiO2なしのものと比べて約4倍のCO生成速度が得られた。触媒耐久性を示すターンオーバー数も73に達し、従来の約4倍の値を記録した。TiO2修飾により高活性が得られる要因を明らかにするため、可視―近赤外過渡吸収分光法で窒化炭素の光励起キャリアダイナミクスを調べたところ、TiO2で修飾した窒化炭素では励起電子が大幅に長寿命化していることが判明した。さらには、耐久性低下に直結するRu(II)-Re(I)二核錯体の脱着が、TiO2修飾によって大幅に抑制されることもわかった。これらが高いCO生成速度、およびターンオーバー数に繋がったものと結論した(ACS Appl. Mater. Interfaces誌に発表)。 Ru(II)錯体吸着Agナノ粒子担持窒化炭素融合型光触媒は、可視光によるCO2還元反応において高選択的にギ酸を生成する。本年度は本系の担持条件の変化によるAgの局所構造変化をEXAFSで調べ、光触媒活性と比較した。含浸水素還元法で調製したAg担持窒化炭素についてAg-K殻EXAFS測定を行った結果、金属AgだけでなくAg2Oの構造を持つAg種が確認された。CO2還元活性が最も高い条件で調製した場合、ほぼAg2Oの構造を持っていることが確認された。一方、担持量や加熱温度を上昇させると凝集した金属Agの構造がAg2Oと共存するようになった。このような金属Ag凝集体を含む複合光触媒ではCO2還元活性が低くなったことから、凝集種を生成させずにAgを担持することが高活性化に重要であると結論した(J. Mater. Chem. A誌に発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異種半導体接合による電子の長寿命化を過渡吸収分光ではじめて明らかにするとともに、その結果として従来の4倍の性能向上を実現することができた。また、高活性化に寄与するAgナノ粒子の局所構造と活性の関係も明らかにした。これらの成果より、研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
光触媒活性の向上には、窒化炭素の可視光吸収能をさらに高める必要がある。平成30年度の研究では、平成29年度からの継続テーマとして異種モノマーとの共重合により広域可視光吸収を可能とする窒化炭素系半導体の創出を目指す。また、未検討となっている窒化炭素半導体から錯体への電子移動過程を分光法で可視化することにも挑戦する。
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