2017 Fiscal Year Annual Research Report
網羅的な神経伝達物質の可視化法開発と精神疾患研究への適用
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16H06145
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
杉浦 悠毅 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (30590202)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 神経伝達物質 / イメージング質量 / うつ病モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
セロトニンの脳内動態の理解は、うつ病をはじめとした精神疾患の理解に重要であるが、セロトニンそのもの、またその前駆体/代謝物の局在マッピングは未達成である。従って、これら低分子の局在・動態も不明な点が多い。本研究でこれまでに確立したイメージング技術を駆使し、正常マウスにおいてセロトニンのイメージング解析を行った。その結果、縫線核を始めとした主要な既知セロトニン神経核に加え、新たに複数のセロトニン集積脳領域を特定する事が出来た。これらは未記載もしくはセロトニン神経核としての機能の記載が非常に少ない神経核であり、今後、生理学的意義を追究する。 さらに、個体の行動と特定脳領域セロトニン濃度の相関を検討するため、急性血中トリプトファン欠乏に起因したうつ様行動を示すモデルマウスを用い、特定の神経核におけるセロトニン含有量が低下を示唆するイメージを得た。 また、別のモデルとして強い炎症が引き起こすうつ様行動異常のメカニズム解明にも取り組んだ。この結果、炎症により活性化したT細胞が、セロトニンの原料である芳香族アミノ酸を消費し、血中の芳香族アミノ酸濃度を低減させ、さらには脳内芳 香族アミノ酸の減少を引き起こし、最終的に、特定神経核におけるセロトニンの減少を引き起こす事でうつ様行動を呈する一連のメカニズムを示すことが出来 た。これは、うつ様行動を引き起こす、新しい免疫・神経の相互作用として論文報告する事が出来た(Nat Immunol. 2017)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画から前倒しして、セロトニン局在イメージング法の病態モデルへの適用を実施し、正常マウス、また複数のうつ病モデルマウス解析に適用する事が出来た。さらに、炎症により活性化したT細胞が、セロトニンの原料である芳香族アミノ酸を消費し、脳内芳 香族アミノ酸の減少を引き起こし、その結果、特定神経核におけるセロトニンの減少を引き起こすメカニズムを示すことが出来 た。一連の知見を、うつ様行動を引き起こす、新しい免疫・神経の相互作用として論文報告する事が出来た(Nat Immunol. 2017)。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、オプトジェネティクスを用いた神経伝達物質の代謝機構の解明と、その制御に取り組む。まず、神経伝達物質代謝におけるニューロンとグリア細胞の代謝相互作用を探索する。この為に作出した、ニューロンとグリア細胞にそれぞれ特異的にチャネルロドプシン発現させたマウスを用い、異なる細胞種を光刺激した際の局所の神経伝達物質産生を、イメージング質量分析により評価する。
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Research Products
(8 results)