2018 Fiscal Year Annual Research Report
DNA複製におけるポリメラーゼ群の協調的機能のゲノム科学的解析
Project/Area Number |
16H06151
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大学 保一 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (80619875)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | DNA複製 / 突然変異 / DNAポリメラーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
PolζでPu-seq実験を実施するためにはPolζのポリメラーゼ活性部位を変異させrNMPを高頻度で取り込むポリメラーゼをデザインし,細胞内で発現させ,Polζによる合成をrNMPでマークする.PolζはPolε,Polδと進化的に近縁なB-familyポリメラーゼである.すでに構築したrNMPを取り込む変異Polε,Polδの配列情報をもとにPolζにおける変異すべきアミノ酸は特定した.Pu-seq実験において,この変異体を使用するためには,DNAポリメラーゼとしての機能を損なっていないことが必要条件であるので,Polζ配列上の5種類のアミノ酸置換によるDNA損傷乗越え合成反応への影響を検証しつつ,NMPを高頻度で取り込むPolζ変異体を構築した.ゲノムDNAのrNMPの除去を行うRnaseH2のみが欠損した株(rnh201Δ)とrnh201ΔとPolζの二重変異株を比較した結果,二重変異株でrNMPの部位で単鎖DNAの断裂がより高頻度に起きていることが示された.これは,細胞内の変異PolζがDNAポリメラーゼとして機能し,rNMPが取り込まれたことを示している.その後,リボヌクレオチド部位の切断によって得られた一本鎖DNAを抽出し,次世代シークエンサー解析のためのDNAライブラリーの作成を行い,illumina Mi-seqにより網羅的な配列解析をおこなった.そのデータの解析により,ゲノム位置に沿って,Polζによる rNMPの取り込み部位を定量的に算出することに成功し,全ゲノムを網羅してPolζ機能のプロファイルを得るに至った.その結果,DNA合成期の比較的遅れて,複製される領域において,Polζの合成が盛んに起きていることが示された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度に計画された研究には繰越期間が必要であったが,最終的に必要とするPolζ分裂酵母変異株を作成することに成功し,構築された変異株を使用して,全ゲノムを網羅してPolζ機能のプロファイルを得るに至った.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,次年度以降の計画にある通り,ゲノムを網羅したDNAポリメラーゼ機能の解析を本格化し,ゲノム上のどのような特徴がDNAポリメラーゼの機能に影響に及ぼすかを直接的に検証することを試みる.加えて,分裂酵母のみならず,線虫,ヒト培養細胞の実験が進展することのより,細胞の老化,がん化に伴って起きるDNA複製機構の変化の解明に向けた重要な実験データが得らえると期待される.
|