2017 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of self-reproducing artificial cell
Project/Area Number |
16H06156
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
車 兪徹 東京工業大学, 地球生命研究所, 特任准教授 (40508420)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 人工細胞 / 脂質合成 / 自己複製 / 脂質膜のダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、脂質合成を触媒する酵素群を、細胞と同じfLスケールの脂質膜小胞内部において合成することで代謝を創発し、自律的に自己複製できる人工細胞の構築に挑戦する。これにより、生体分子の集合体がどのように細胞のサブシステムを構成し、生命現象を成り立たせているのかを理解することを目的とする。 まず脂質合成を触媒する10種の酵素から脂肪酸合成系を再構築し、これを細胞サイズの膜小胞内部で反応させることで、膜の形態変化を観察することを試みた。大腸菌から精製した10種の酵素、FabABDFGHIZ、TesA、ACPとMalonyl-CoA、Acetyl-CoA、NADH、NADPHを試験管内で混合し、合成された脂肪酸の定量をLCMSを用いて行なった。その結果、C14:0とC16:0をメジャープロダクトとする脂肪酸の合成が確認できた。しかし合成量は当初予想していたものよりも低かった。その原因の一つとして、合成産物のほぼ全てが、melting Tの高い飽和脂肪酸であると予想した。Melting Tの低い不飽和脂肪酸を主とするよう脂肪酸合成系の調整を行なったところ、C16:1やC18:1がメジャープロダクトとなった。これに伴い、反応開始後約10分で出現するタンパク質の凝集化を抑えることができた。また嫌気条件下で反応を行なったところ、C18:1のみ合成量の増加が観察された。さらに合成産物の局在場所を提供すべく、リポソーム存在下で反応を行なったところ、合成反応の初速度が上昇した。このことから、合成されたフリーの脂肪酸は酵素活性を低下させるようネガティブに働くため、細胞内では合成と同時に生体膜に挿入することが示唆された。これまでに約200uMの脂肪酸が合成されていることを確認している。 今年度は、本研究課題の基となる、膜小胞内タンパク質合成技術を用いて、Chem Commun.とACS Synth. Biol.の2報をパブリッシュすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予想していたものより、やや遅れていると自己評価する。その原因の一つに平成29年度に本研究課題を基課題とした、海外共同研究加速基金の採択に伴う、アメリカイギリスでの約半年に及ぶ海外研究を行なったことが考えられる。物理的に日本の研究環境を不在にすることから基課題の研究スピードが低下した。また脂肪酸の同定と定量化のために新たに導入したLCMSの設置と調整に時間を要したことも原因の一つであると考えられる。反面、再構築系により合成された脂肪酸の簡便でスピーディーな定量化をルーチン化することに成功した。また、海外の主要な研究室と連携をとって研究を進める基盤が整った。 人工膜小胞内部で複数種のタンパク質を発現し、機能させることに成功したことを示す論文をpublishすることができたが、脂質合成系ではまだ実行していないため、早急にこれを行う。
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Strategy for Future Research Activity |
内部での脂肪酸合成による人工膜小胞の形態変化観察と、膜小胞内部での脂質合成酵素の合成と脂質合成代謝の創発を行う。 人工膜小胞の形態変化観察については、再構築した脂肪酸合成系のyieldを上げるために、系の最適化を行なっている。現在、約200uMの脂肪酸をin vitroで合成できることを定量結果から確認している。このことは、直径20umの脂質膜ないでどう反応を行なった場合、母膜小胞を形成する脂質の20%を合成していることを意味する。さらに合成産物を増加させるために、反応律速となっている要因を探り出し系の最適化を行うことで合成量の増加を試みる。また内部合成された脂肪酸に起因する膜の形態変化を逃さず解析するため、均一で球状の膜を形成するための方法を模索する。現在マイクロ古いディクスを用いた膜形成と内包化を試みているが、内部での生化学反応を阻害せずにリアルタイムで観察できる手法を考えている。 膜小胞内部でのタンパク質合成に関してはすでに成功例がいくつか得られているが、多種の酵素がバランス良く合成されるための調整はまだ不十分である。現在10種のDNAを個々に投入しているが、これらを一つのDNAにした人工ゲノムの作製を念頭に置いている。また、脂肪酸合成以降の脂質合成反応は反応場が生体膜上であるため、plSXとplsYによる脂肪酸合成と連携した脂質のまくそ運輸機構の再構築も行う。
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Research Products
(12 results)