2016 Fiscal Year Annual Research Report
紅海・アンダマン海におけるジュゴンの摂餌戦略比較―潮汐変動の影響に関する研究
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16H06158
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
市川 光太郎 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 准教授 (70590511)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 受動的音響観察 / ジュゴン |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年11月8日から18日にかけて、マレーシア・ジョホール州・ティンギ島およびシブ島において受動的音響観察を実施し、摂餌場とその沖側の地点について、ジュゴンの発声パターンを調べた。本海域にジュゴン用自動水中音録音機AUSOMS-Dを11月12日に設置し、11月16日に回収した。合計録音時間は99時間であった。狭帯域音強調による鳴音の自動検出によって一時間あたりの発声頻度の変化を応答変数、時刻を説明変数とした一般化線形混合モデルによって時刻の効果を解析した。それぞれの調査地点をランダム効果とした。沖側の地点について、鳴音は合計で113回検出された。1時間あたりの発声回数の最大は11月15日の1200-1300時に41回あった。このとき、多くがトリルであった。ほぼすべての鳴音が1200-1700時の間に記録された。発声の周期を示す自己相関関数は22.8時間で最大値をとった。ティンギ島沖側に生息するジュゴンの発声は午後に活発になることが示唆された。 摂餌場では小型水中音録音機AUSOMS-miniを2台およびAUSOMS-mini2を1台、AUSOMS-Dを1台設置した。AUSOMS-mini およびAUSOMS-Dはシブ島付近の摂餌場に設置し、AUSOMS-mini2はティンギ島付近の摂餌場に設置した。合計録音時間はそれぞれAUSOMS-miniが94時間ずつ、AUSOMS-mini2が96時間、AUSOMS-Dが118時間であった。現在までの解析では、摂餌音、鳴音ともに記録されていないことが確認された。 なお、2014年11月にタイ国において現地研究機関が実施した調査に対して2015年1月に市民デモが発生し、2016年も引き続き反対活動が継続された。このような状況で最大の成果を上げるために、代替調査地であるマレーシアにおいて研究を遂行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マレーシアにおけるジュゴンの受動的音響観察を中心に調査を進めた。摂餌場沖のVocal hotspotでは摂餌場とは異なる行動パターンが見られる可能性が高い。潮下帯の摂餌場における録音データからは、ジュゴンが常に餌場にアクセスできる状況での摂餌生態に関する知見が得られることが期待される。このような研究は過去に例がなく、ジュゴンの生態理解に貢献することが期待される。本研究の結果を招待講演3報、国際学会3報、国内学会4報としてとりまとめ、発表した。また、これらの業績は学界内外でも認められ、国際学会セッションチェアー1件、辞書編集委員1件、さらに高校生研究インターン制度の受け入れ1件を担当した。 以上から、本研究の進捗はおおむね順調であると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
補助事業の目的をより精緻に達成するための現地調査、学会参加および論文投稿などを中心に進める。調査実施予定国でデモやストライキが発生した場合は速やかに予定変更し、代替調査地であるマレーシアおよびインドネシアなどで研究を遂行する。
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Research Products
(19 results)