2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16H06159
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩川 弘宙 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (60710415)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | RNAサイレンシング / RNA-DNAハイブリッド / siRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度から平成29年度8月にかけ、大きく分けて4つの計画を実施した。以下にその概要を記す。 1.モデル植物であるシロイヌナズナが持つ複数のAGOタンパク質からなるRISCと、標的RNAまたは標的DNAとの相互作用を解析した。細胞質で機能するAGO1およびAGO2から作り出されるRISCは、標的DNAよりも標的RNAと強く相互作用し、核内でDNAメチル化促進に関わるAGO4、AGO6、AGO9-RISCは標的RNAよりも標的DNAと強く相互作用した。これらのデータは核内RISCがRNA-DNAハイブリッドを介して機能している可能性を支持する。 2.核内でヒストンメチル化に関わる事が知られている酵母のRISCを試験管内形成する実験系の確立を試みた。酵母のAGOを植物の試験管内系で発現させ、レポーター系でRISC形成の有無を計測した。酵母のAGO単独発現ではRISC形成は認められなかったものの、ARC (Argonaute siRNA chaperone)を加えた場合、低いながらもRISC形成が認められた。今後実験系を最適化し、結合実験に十分な量のRISCを用意する予定である。 3.生体内で植物の核内AGOが結合するDNA領域を高感度で解析する実験系「改変iCLIP」法を確立するための条件検討を行った。使用した抗体の効率が十分でなかったため、AGO4に対する4種類の新規抗体を作製し、再度条件検討を行ったが良好な結果は得られなかった。 4.植物のDNAメチル化領域を最初に規定する小分子RNAを作り出す酵素とされているRNA依存性RNAポリメラーゼ6(RDR6)の基質特異性を調べ、RDR6がPoly(A)を持たない異常なRNAを基質にすることを明らかにし論文にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
改変iCLIP法の確立こそ達成できなかったものの、5種類の植物RISCの標的特異性を調べ、核内RISCのみが標的DNAを好む事を示すことに成功した点、酵母RISC形成を研究する基盤となる試験管内系の確立に光が見えた点、そしてDNAメチル化領域を最初に規定する小分子RNAを作り出す酵素であるRDR6の基質特異性を解析し論文としてまとめた点を考慮し、当初の計画以上に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
改変iCLIP法の確立は達成できていないものの、他のグループが行った植物体を用いたUVレーザーChIP法は我々のRNA-DNAハイブリッド説を支持していることから、次のステップに移ることを計画している。すなわちDNAに核内RISCが直接結合することでどのようにしてDNAのメチル化を促進するのかを調べることである。しかしながら、現在のところ、核内AGOがどの様にしてDNAメチル化酵素DRM2を標的上にリクルートするのかは謎である。今後は、その機構の解明を目指すと共に、AGO4とDRM2を介した、DNAのメチル化を、試験管内で再現するための実験系の開発を行う。
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