2017 Fiscal Year Annual Research Report
Gタンパク質共役受容体におけるシグナル伝達機構の解明
Project/Area Number |
16H06164
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
原田 隆平 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (60612174)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | Gタンパク質共役受容体 / 分子動力学シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
Gタンパク質共役受容体(GCPR)は, リガンドや光などの細胞外シグナルを受容し, G タンパク質の活性化を介してシグナルを細胞内へ伝達する機能を担う生理現象に不可欠な7回膜貫通型受容体である. 細胞表面には様々な受容体が存在しているが, GPCRファミリーは生体のあらゆる細胞に存在しており, 生命維持に不可欠な機能のほぼ全てに関与しているため, 生理現象を理解するために極めて重要である. 次年度は, アゴニスト結合に伴う膜貫通領域ヘリックス揺らぎがシグナル伝達機構に果たしている役割に注目した. 始構造として研究代表者が開発した遷移経路であるPaCS-MDを用いてアゴニストを β2AR に結合させた複合体構造を選択し, また終構造として活性型結晶構造を選択し, 膜貫通領域における伝達経路を探索した. 活性型・不活性型結晶構造の比較では, アゴニスト結合後, 細胞内領域に突き出たヘリックス構造(TM5, TM6)が外側へ大規模に構造変化しており, ヘリックスの再配向がシグナル伝達において重要な役割を果たしていると予想されことから, この領域の構造変化を重点的に解析した. また, 活性化型構造へ到る膜貫通ヘリックスの遷移経路を特定するためPaCS-MDを用いて探索し, ストリング法により最小自由エネルギー経路を求める計算手法の開発を進めた. 反応座標として, 活性化型・不活性型のヘリックス構構造の平均自乗変位(RMSD)を選択し, RMSD が小さく なる様に初期構構造を選択していくことで, 活性型構へ遷移させることを試みた. 現在, 最小自由エネルギー経路上に存在する膜貫通領域の中間体構造を解析中である. 今後は, 準安定状態間遷移を経て多段階的に伝播する動的機構を生み出していると予想される「膜貫通領域の揺らぎ」がシグナル伝達に果たす役割を解明する.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度後半に搬入予定の大型計算機の仕様をCPUベースからGPU(演算加速器)ベースへ変更したことから, 搬入時期の遅延が生じたため, 全体的に研究の進捗が遅れている. 計算機搬入までの遅延期間を利用し, PaCS-MDとマルコフ状態モデルを組み合わせた自由エネルギー計算法を完成させ, 現在論文執筆中である. また, Gタンパク質共役受容体のシグナル伝達経路に関して, ストリング法と組み合わせることで, 最小自由ネルギー経路を求める計算手法も開発予定である. また, 大型計算機自体は搬入済みであり, PaCS-MDとマルコフ状態を適用したリガンド結合経路を計算中である. 今後は, 細胞膜中の7回膜貫通ヘリックスの再配向に関して, 自由エネルギー地形上に存在する中間状態(準安定状)の解析を進める予定である. 解析にあたり, 7開幕貫通ヘリックスの構造変化を記述する適切な反応座標を設定する必要が生じたため, PaCS-MDの反応座標を動的に変えることで, より適切な反応座標を探索していく計算手法も開発中である. 特に, これまでのPaCS-MDでは, 終構造から測定した平均自乗変位(RMSD)を反応座標として構造リサンプリングを繰り返していたが, より複雑な構造変化になればなるほど適切な反応座標を設定する必要が生じることがわかってきた. この様な理由から, PaCS-MDにおける反応座標を再考し, 手法自体の拡張も実施した. 場合によっては機械学習などと組み合わせることにより, より効率的な反応座標選択を実現するアルゴリズムを開発する.
|
Strategy for Future Research Activity |
大型計算機の搬入も完了し, PaCS-MDによる遷移経路探索, 自由エネルギー計算, 最小自由エネルギー経路探索, 反応座標選択などの手法自体の整備拡張も整いつつある状態なので, 最終年度は, これらオリジナリティの高い計算手法を駆使することにより, Gタンパク質共役受容体のシグナル伝達経路全容の解明を目指す. 特に,計算機資源に関してはGPUへの仕様変更により, 飛躍的な計算コストの削減に成功しているので, これまでの手法適用によるアプリケーションの遅れを取り戻す. 最終年度は, 細胞膜外に存在するGタンパク質との相互作用, 分子認識問題に関し全システムの総原子数が更に増大することが予想されるので, 場合によっては粗視化モデルと全原子モデルを組み合わせたマルチスケールシミュレーション法を開発し, 組み合わせることで, Gタンパク質共役受容体のシグナル伝達経路の全容解明を目指す.
|
Research Products
(17 results)
-
[Journal Article] Classical cumulant dynamics for statistical chemical physics2017
Author(s)
Yasuteru Shigeta, Ryuhei Harada, Ryuma Sato, Hirotaka Kitoh-Nishioka, My Bui Thi Kieu, Akimasa Sato, Takaki Tokiwa, Akane Kyan, Yuki Ishii, Masato Kimatsuka, Sotaro Yamasaki, Megumi Kayanuma, Mitsuo Shoji
-
Journal Title
Molecular Simulation
Volume: 43
Pages: 1260-1268
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-