2016 Fiscal Year Annual Research Report
栄養状態を反映する発現バイオマーカーの体系的作出と利用
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16H06171
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
永野 惇 龍谷大学, 農学部, 講師 (00619877)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | トランスクリプトーム / リン / 発現マーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
窒素やリンなどの主要な栄養成分やホウ素などその他の必須元素の欠乏・過多は植物の生育に重大な影響を及ぼす。そのため植物体中のこれらの成分量を知ることは様々な局面で重要となる。従来から行われてきたCNコーダーなどによる測定に加えて、近年、遺伝子発現量をもとにしたマーカー(以下、発現マーカー)の開発がおこなわれつつある。ここでいう発現マーカーは複数遺伝子の発現をもとに計算される指標のことである。本研究では、申請者のグループが有するユニークな技術(スマートインキュベータ、低コスト多検体RNA-Seq、統計モデリング・機械学習)を駆使して気象条件、体内時計時刻、日齢、植物種によらず頑健に栄養状態を表す発現マーカーを体系的に作出する手法を確立することを目標とした。 発現マーカーの作出のためには、対象形質が様々な値になっている多数の測定が必要である。そこで、多検体を安定に処理するために、RNA-Seqライブラリの自動調整系を確立した。これによって、同時に384多検体のRNA-Seqライブラリの自動調整を行うことが可能となった。 今年度はイネ、ネギ、タバコを材料として、約2000サンプルのRNA-seqデータを取得した。ネギ、タバコに関してはリン施用条件を様々に変えたサンプルからデータを取得しており、それらのデータを用いた解析から、例えば8遺伝子の発現量の組み合わせからなる十分な精度の発現マーカーを作出することに成功した。また、これらのデータ解析の過程で、発現マーカー作出のための新規データ解析手法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
単純にリン量を推定可能な発現マーカーの作出に成功しただけでなく、発現マーカー作出のための新規手法を開発することが出来たため、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に取得したイネ、ネギ、タバコのデータの解析を進めるとともに、その結果をもとに、スマートインキュベータを活用して、様々な時刻、気温、光条件下で、窒素、リン条件を変えて栽培した追加サンプルを取得する。それらのサンプルを低コスト多検体RNA-seqライブラリ調整システムに供することで数百サンプル規模の追加トランスクリプトームデータを取得する。また、昨年度より開発に取り組んでいる新規の発現マーカー計算手法のライブラリ化などの整備と、性能の評価を進める。昨年度と今年度のデータをあわせて、特にリンの汎用発現マーカーの試作版を作出する。 並行して、野外トランスクリプトームデータを用いて、発現マーカーの利用方法の検討を行う。申請者らのグループではこれまでに圃場のイネ(日本晴/コシヒカリのCSSL、BIL、タカナリ/コシヒカリのCSSL)からえた約4000 サンプル分、自然集団のシロイヌナズナ近縁多年草(ハクサンハタザオ)からえた約2000 サンプル分のトランスクリプトームデータを蓄積している。これらのデータに発現マーカーを適用することで、野外環境下での栄養状態の推移を推定する。例えば、ハクサンハタザオの2年間の季節変動データから栄養状態の年周変動が明らかにできると期待される。また、イネのサンプルに関しては対応する葉の冷凍サンプルが残っており、窒素量などを測定することも可能である。これらの結果、サンプルを活用し、今後の分子機能解析のターゲットとするべきタイミングを明らかにする。
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Research Products
(4 results)