2017 Fiscal Year Annual Research Report
新規植物細胞融合現象の必須因子の同定と分子メカニズムの解析
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16H06173
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
丸山 大輔 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 助教 (80724111)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 助細胞胚乳融合 / 多花粉管拒否 / 細胞融合 / シロイヌナズナ / 花粉管 / 胚乳 / 遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物細胞の周辺は厚い細胞壁に覆われていることから,細胞同士が接触を必要とする細胞融合現象は起こらないと考えられていた.ただ,雌側組織である胚珠の内部に存在する2つの雌性配偶子,卵細胞と中央細胞の受精のみが被子植物の発生において例外的に起こる細胞融合として知られていた.近年,われわれのグループは,受精した中央細胞,すなわち胚乳が隣に位置する助細胞を融合・吸収することを明らかにした.29年度,われわれはこの助細胞胚乳融合現象が,受精後の新規遺伝子発現や胚乳核分裂を制御するサイクリン依存性キナーゼ(CDK)活性に依存することを原著論文として報告した.また,シロイヌナズナの胚珠の助細胞や胚乳において,助細胞胚乳融合が起こる前後のカルシウム動態を解析した研究を展開した.さらに,助細胞胚乳融合が起こった後に残存助細胞由来のミトコンドリアが胚乳由来のミトコンドリアと融合していく過程のライブイメージングを行った.これらの成果については現在論文を執筆中である. 順遺伝学的アプローチでは,自家受精後の胚珠の約25%が助細胞胚乳融合をしない変異体(#17)が得られた.この変異体を親株と相互に交配したところ,助細胞胚乳融合欠損を示す胚珠の頻度が25%よりも低かったことから,この表現型が潜性であることが示唆された.驚いたことに,変異体の雌しべにおける花粉管の伸長パターン解析から,助細胞胚乳融合が欠損していても残存助細胞の不活性化への影響が限定的であることが示唆された.原因遺伝子のマッピングに向け,変異体#17と親株との戻し交配が完了した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでわれわれは,助細胞特異的にミコトンドリア局在シグナルを付加したmTFP1を発現する植物が,発生が進んだ種子においても助細胞胚乳融合が起きたかどうかを明瞭に判断することができるマーカーラインとして適していることを見出していた.この株に対して,EMSによる変異誘導を行い,2213個体のM1世代を生育させ,自家受粉した雌しべを解剖して蛍光顕微鏡観察を行った.通常,胚乳核が4~32個になった胚珠ではmTFP1でラベルされた助細胞のミトコンドリアが助細胞胚乳融合によって胚乳へと流出する.これに対し,胚乳核の分裂がみられるものの,助細胞のミトコンドリアが胚乳へと流出しない胚珠の頻度が10%を上回る変異体候補を41個体選抜した.さらにそのM2世代まで表現型が伝達されるかどうか調べる二次スクリーニングの結果,自家受精後の胚珠の約25%が助細胞胚乳融合をしない変異体が1つだけ(#17)得られた.また,変異体を親株と相互をしたときに助細胞胚乳融合の欠損が生じる頻度は,自家受精の場合よりも低かった.これは受精後の胚乳において父側か母側のどちらかが野生型であれば他方の機能欠損を補うことができることを示唆する.現時点で変異体#17と親株との戻し交配が完了しており,原因遺伝子のマッピングに向けた準備が完了した.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は#17の原因遺伝子を同定するとともに機能解析を行う.現在,#17を親株と戻し交配したF1の自殖が完了している.そこでまずは,F2世代100個体についての自殖したときの助細胞胚乳融合の頻度から,野生型,ヘテロ接合型,ホモ接合型を同定する.次にホモ接合型個体と親株のゲノムDNA配列を比較することで,ホモ接合型個体のみに出現する一塩基多型(SNP)を明らかにする.それらの多型のなかでも特に助細胞や胚乳において特異的に発現をする遺伝子に対してミスセンス変異やナンセンス変異を引き起こすものは,原因遺伝子の可能性が高いと推測される.絞られた候補から原因遺伝子を同定する実験として,野生型の遺伝子を導入する相補実験を行う.原因遺伝子が明らかになったら,その3kb上流の配列とHistone 2B-mRUBY2の遺伝子を融合させたレポーター遺伝子をもつ形質転換体を作製し,発現する組織や細胞を解析する.一方で,他の植物種とも保存性の高い配列を除いた欠損シリーズを変異体に導入することで,タンパク質の機能に重要なドメインを明らかにする.
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] RETINOBLASTOMA RELATED1 mediates germline entry in Arabidopsis.2017
Author(s)
Zhao, X., Bramsiepe, J., Van Durme, M., Komaki, S., Prusicki, M.A., Maruyama, D., Forner, J., Medzihradszky, A., Wijnker, E., Harashima, H., Lu, Y., Schmidt, A., Guthorl, D., Logrono, R.S., Guan, Y., Pochon, G., Grossniklaus, U., Laux, T., Higashiyama, T., Lohmann, J.U., Nowack, M.K., Schnittger, A.
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Journal Title
Science
Volume: 356
Pages: eaaf6532
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Spatiotemporal deep imaging of syncytium induced by the soybean cyst nematode Heterodera glycines.2017
Author(s)
Ohtsu, M., Sato, Y., Kurihara, D., Suzaki, T., Kawaguchi, M., Maruyama, D., Higashiyama, T.
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Journal Title
Protoplasma
Volume: 254
Pages: 2107~2115
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] A pharmacological study ofArabidopsiscell fusion between the persistent synergid and endosperm.2017
Author(s)
Motomura, K., Kawashima, T., Berger, F., Kinoshita, T., Higashiyama, T., Maruyama, D.
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Journal Title
Journal of Cell Science
Volume: 131
Pages: jcs204123
DOI
Peer Reviewed
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[Book] Plant Germline Development2017
Author(s)
Susaki, D., Maruyama, D., Yelagandula, R., Berger, F., Kawashima, T. Humana Press, New York, NY
Total Pages
47~54
Publisher
Humana Press, New York, NY
ISBN
978-1-4939-7286-9