2017 Fiscal Year Annual Research Report
網膜光受容体メラノプシンの分子解析から迫る哺乳類の行動・生理の光制御機構
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16H06174
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
羽鳥 恵 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任准教授 (90590472)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 光受容 / メラノプシン / オプシン |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の光応答反応は「見ること」である視覚と「視覚以外の光応答」である非視覚応答の2種に大別される。実験マウスMus musculusを使用した研究により、数%の網膜神経節細胞に青色光感受性のオプシンであるメラノプシンが発現し、視細胞層の桿体・錐体に加えて第三の光受容細胞として機能することが明らかになってきた。メラノプシン発現網膜神経節細胞は自身が感受した光のみならず、桿体・錐体からの光情報を統合して脳に伝達し、概日時計の位相調節、睡眠、瞳孔収縮、および夜行性生物のマウスでは光回避行動などの非視覚応答を担う。そのためメラノプシンの機能障害は片頭痛や睡眠障害などの光による悪化の一因であると考えられる。コンピューターのモニター画面のような人工的な光源から発せられるブルーライトや夜遅くまでの光照射環境はヒトの概日リズムを乱す原因であり、概日時計の乱れはメタボリックシンドローム、肥満、癌、冠状動脈性心疾患や認知症などの疾病を引き起こす可能性を高めることが疫学的に知られている。このように非視覚光応答は非常に重要な生理機能を担うにも関わらず、その研究は視覚応答と比べ大幅に遅れている。特に、霊長類での研究はほとんど行われておらず、その解析が待たれている。メラノプシンは桿体・錐体の光受容体とは異なり、無脊椎動物のオプシンに類似してると考えられている。視覚応答・非視覚応答を理解するために、メラノプシン発現網膜神経節細胞内で光情報がいかに制御されているのかを解明したい。本研究ではメラノプシンの性質を明らかにするためミュータジェネシスおよび特定の領域を狙った変異体の作製を同時並行させている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コモンマーモセットCallithrix jacchusはラットと同程度の重量の小型霊長類である。活動・摂食・飲水の量や時間帯を自動計測する系が存在していなかったため、そのセットアップに取り掛かり、基本的な概日リズムやパラメータを計測することが出来るようになった。昼行性であり、また、外界の光環境の入力を排して行動リズムの周期を測定したところ、非常に強固な概日時計の発振系を有していることを明らかにした。並行してメラノプシンの様々な変異体の作製を進め、細胞に発現させることで機能を評価し、in vivoマウス実験に持ち込む候補分子を得ることが出来た。C末端細胞内部位の一部Ser/Thr領域がアレスチンを介したリン酸化と、それに伴う光応答終了へ寄与していることを明らかにした(投稿中)。
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Strategy for Future Research Activity |
選定した候補分子をマウス個体において評価する。複数の有力な候補を得ることができたので、順次解析を進める。あわせてメラノプシンの霊長類におけるin vivoの機能を明らかにするべく瞳孔収縮の測定方法など、様々な非視覚応答の測定系を検討している。安定性が高く、かつ動物の苦痛度が最も低い方法を最優先させる。
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Research Products
(6 results)